【芝居】「いたこといたろう」渡辺源四郎商店
2018.5.4 19:00 [CoRich]
「イタコ演劇祭」と銘打っての二本立て企画公演のもう一本。6日までアゴラ劇場。そのあと青森。90分。
東北にある地方都市の自宅でイタコを営む女。そこへ小学校で働いているという若い女が訪れる。去年亡くなった母親がここを訪ねるようにいったのだという。
すこし乱雑な感じすらする部屋に大きな祭壇。誰かの実家を訪ねるような日常の中。初めて会う二人は探り探り話をするうちに、それぞれの生き様が徐々に明らかになり、そこに物語が浮かび上がるのです。
ネタバレ
イタコの女は目が悪く産みの母には育てられずに育ての親となる師匠に育てられ、イタコの修行をするが男に走り破門されていること。訪れた女もまた産んだのとは別の女に育てられイタコを勧められるがその道には進まなかったこと。二人の女を育てた「師匠」が重なり合い、その重なりはどんどんと大きくなっていくのです。
イタコの仏おろしというミステリアスなものをうまく生かして、二人の会話劇に唐突に割り込むように、若い女が豹変して憑かれてしまったりがところどころに。物語に波動のようにリズムを作り出します。 本当の「師匠」が降臨すること。ニセモノとして生きてきたイタコが本物に戻れる救済、若い女もまたホンモノのイタコの素質があることで台詞では他人と言っているのとは裏腹に、この二人には血のつながりがみえるのです。
若い女はイタコの娘といじめられた過去に呪い殺すぐらいするやや虚勢をはったような、しかしきっと強く生きてきたのだと思わせることば。 イタコの女もまた、手放した子供のことを忘れず、節目節目で洋服を買っておいたこと、祭壇の両脇、子供服やランドセルから学生服、リクルートスーツまで。想いを馳せる女の長い時間が地層のように積み重なる風景なのです。
超常現象っぽいことが起きたりもする物語にはなっているけれど、作家の視点はむしろ、降霊の技術を失いながら、しかしイタコでしか生活ができない女が暮らしてきた長い時間に想いを寄せているように思います。「降りてきて最初のリアクションおかしいでしょ」と疑いの目を向けるような台詞のあと「神様が喋ってる、人を助けるための嘘」なのだという直球は、イタコというある種のファンタジーをファンタジーとして敬意を持って扱うことの、伝承に対するきちんとした心意気。
若い女を演じた三上晴佳は本当に見事。落ち着いた年齢なりの女性の奥行きをしっかりと。サルのコミカルですばしっこいシーンはも実に楽しい。イタコを演じた林本恵美子は、年輪を重ねてきた女の寂しさが強調された雰囲気を哀しく。
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