【芝居】「愛とか死とか見つめて」渡辺源四郎商店
2018.5.4 14:00 [CoRich]
6日までアゴラ劇場。75分。そのあと青森。
都会にでたきり一度も戻っていない息子は売れない役者をしている。父親の訃報を受け、経産省で働き一緒に暮らしている女性を連れて田舎に戻る。タクシー運転手だった父親はいつのまにか村長になっており、それを支援していたNPOのスタッフに頼まれ、息子は跡を継いで出馬を決める。
原発関連の処理施設をめぐるNPOや近隣自治体のパワーバランス、そこでなぜか村長になった父親。葬式のために戻ったのは芝居を夢見て上京したけどモノになってない男と、東京で出会い事実婚してる国家公務員の優秀な女、という構図で語られる物語。「イタコ演劇祭」という枠組みにイタコという役もあるけれど、台詞のほとんどが近所の知り合いに掛けるような独り言という祖母の存在がこの芝居のイタコなのだと思うのです。
この土地で生まれ育ったのに出て久しぶりに戻って初めてMOX処理施設と近隣の市との関係、NPO組織などの現実を知るぐらいにゆるい関心。知ってもそれに積極的というわけではないけれど、村長の存在が必要なNPOに後押しされて、自分の存在する場所は東京なのかここなのかをゆらぐ感じは、生まれ育った土地から両親と離れて暮らす人にはきっと考えること。ワタシだって数年離れただけでもちょいとは考え、ふれる感覚なのです。
原発廃棄物の処理施設という、すぐには動かないやや中長期の問題があることと、その土地で暮らす人々が買い物にも病院にもいけないという直近の問題もまた現実でその課題に元タクシー運転手の村長が、自ら働くことは、現実の生活で困っている人が居れば、それを解決するために額に汗して働くということの地に足がついた感じ、対して空中戦のように利権で動く隣の市の市長はダースベーダーのような存在にも見えてくるのです。
国家公務員である妻を演じた山上由美子はスーツ姿、思いの外(失礼)クールビューティで新しい魅力、とりわけ終幕はちょいと凛としてカッコいい。夫を演じた工藤良平は、乗せられて出馬というお調子者っぽく見えてしかし真剣に考える姿。祖母を演じた音喜多咲子は見た目こそ若いけれど、見えないものが見えている日常、なるほど魂に近い場所の人々、という「イタコ」の姿。NPO職員を演じた奥崎愛野はヤケに可愛らしく、客席からでもちょいとドキドキしてしまうわたしです(オジサンがごめんなさい)
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