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2018.05.07

【芝居】「わたくしごと2本立て[はくちょうたちの、/ closets]」waqu:iraz(ワクイラズ)

2018.4.26 19:30 [CoRich]

昨年、せんがわ劇場演劇コンクールで上演された「closets」(未見)のリクリエーションに、その1シーンを独立させた新作「はくちょうたちの、」を組み合わせた二本立て上演。 30日まで神奈川県立青少年センター。110分。

坂の上の女子校、五人の二年生たち。三階建て、螺旋階段からは男子校が見える。美術教師に恋している、幼なじみに恋している、クッキング部、男子校に恋人が居るバトン部、授業には時給払ってほしい。大学に行くかどこにいくか、働くか、女子校は嫌だし。「はくちょうたちの、」
6人の女たち。何でも揃うイオンが好き、言い寄ってきた男は結婚しているけれどそれで幸せで。兄に負けたくなくて勉強してばりばり働いて結婚したけど仕事と子供どちらかしか選べないの。努力によって手にするキャリアという結果が全て、7cmヒールで颯爽と。ジャージがラクだけどそれじゃもてない友達が合コンに誘ってくれて結婚したらそこがゴールか。美大卒で独立独歩、でも皆から置いていかれているように感じて焦る。男受けよく自分を磨いて選び、勝ち取る。「closets」

いろいろ検索してわかったけれど、アンソロジー形式とはいえ、一本の芝居から派生したとは思えない二本立て。確かにいろんな女たちの点描。ダンスに強みを持つ主宰・小林真梨恵だけれど、今作では彼女だけではなく出演者によるディバイジング(集団創作)によってつくられているといいます。

「はくちょうたちの、」は、女子校の生徒たち、自意識と恋心と、将来に対する不安ととはいえ、まだ何ものでもないから何にでもなれるようなある種の万能感と世間をちょいと嘗めた感じとかがない交ぜになって。全体に白と青、グレーで統一された全体の雰囲気はまあ、年代らしい清廉な雰囲気といえばそうだけど、目がつぶれるんじゃないかと思うほどにアタシにはあまりに眩しい。ちょいと人見知りっぽい雰囲気の中野志保実、イケイケキラキラな雰囲気の佐藤あかりのコントラストがちょいとよいのです。

だいぶ大人、アラサー女たちの「Closets」は対照的に溢れる色。こちらは生着替え的なものもあったりして、眼福でもあるし、ジャージから7cmヒール、ジーンズカジュアルからゆるふわまで様々な衣装も楽しく。

ここまで生きてきた自負心だったり、ある種の諦めだったり、引き返せなくなってる微妙な心持ち。かといって枯れる歳でもなく、まだまだ先はあって、その選択肢は高校生の時のそれよりはずいぶんと狭く、しかし現実的に明確に輪郭が見えているけれど、それでいいのか、ほんとうに手に入るのかという不安はつきない感じもまた、年齢らしい感じがします。

後半のそれぞれのマッチメイク、まるでボクシングのように戦い合うし、勝ち負け決めてるけれどそれは決して一つの生き方じゃなくて、ぐるりと一回り、どの生き方だってちゃんと肯定し、しかしその道のりの厳しさもちゃんと折り込む作家の優しい視線なのです。仕事と子供を選べない女を演じた菊池ゆみこのこつこつ努力な感じ、バリキャリ女を演じた武井希未の胸張って歩く凜々しさ、ゆるふわ女を演じた竹内真里の芯の強さ、イオン好き女を演じた宮﨑優里の堅実な生活感。美大卒を演じた小林真梨恵のボーイッシュで孤独に耐える格好良さだけれど、ちょっと騒ぐようなシーンで彼女に対して女たちが突っ込むようなところも楽しく。とりわけ、ジャージ女を演じた関森絵美が結婚したい一心での一連のシーケンスの爆笑編はちょいと凄く、印象的。

ワクイラズは、星とか宇宙とかというちょっと壮大な感じを詩的に描くシリーズ( 1, 2, 3) と、女たちを描くシリーズ( 1) とがあって、今作は後者の雰囲気。このユニットに限らずまあワタシは女たちの自分語りが大好きだってのはまあ好みの問題なのですが。

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