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2018.04.04

【芝居】「夏への扉」キャラメルボックス

2018.3.21 13:00 [CoRich]

2011年銀座での初演作を7年ぶり、同じ季節に再演。25日までサンシャイン劇場。そのあと兵庫。

夏という未来を信じている猫、未来が出てくるまでたくさんの扉を開けろとせがむという序盤の言葉、それと対になるように主人公は陰謀にはまり頼るべき何者もない時代に放り出され、いくつかの偶然を手に入れながらも、成功するまで諦めないでずっと行動する男。時代が回ったのか、ワタシが歳をとったのか、ここまで眩しいほどにどこかに未来はあると信じきれなくなったりするアタシだったりするのですが、ちょっと思い出すように沸き立つ気持ちが立ち上がります。 もっと若い観客(あるいは小説の読者)がこの物語から自分の前途をどう感じるようにインスパイアされたか、ということはちょっと興味があります。

初演時の当日パンフにあった「SF冬の時代」は7年を経て思えば、映画にもSF原作は増えていて、もしかしたら初演時よりも老いも若きもSFに対してのハードルは下がってきているように思います。生きていれば色々変化するなと感慨深い気もします。

SFの古典的名作を世界で初めて舞台に乗せた初演は期待いっぱいで始まりました。小説で語られる猫すら(かなり大柄な)人間が演じたり、舞台のタッパ一杯のたくさんの扉とそこの前に立つ俳優たちのシーンの美しさなど細やかさは内包しつつエンタメな物語として完成度の高い仕上がりでしたが、それは311という期間にまさに重なってしまった公演としての不遇でもありました。今は亡き銀座セゾン劇場、何度かは通いながらも、あの時期のロビーや劇場の雰囲気は今でも鮮明に思い出せるのです。が、そんなことはみじんも見せずに多くの観客達にアプローチし、劇場に居る数時間を間違いなく楽しませようというさまざまな工夫はきちんとあの時のままで安心するのです。

初演で岡田さつきが演じたヒールを背負ったのは、原田樹里。美しく男を手玉に取る若き頃と、記憶を都合よく改竄されて醜悪ともいえる中年女の厚みは役者として一歩も二歩も進んだように感じます。小説よりもむしろ女優が一人で醜悪に変化する二つの年代を演じることの演劇だからこその面白さ、もちろん演じる側には相当な負担だろうと思うけれど。良き友人を演じた客演の二人、井俣太良、百花亜希も魅力的でキャラメルの座組で観る新鮮さと嬉しさと。初演に続き猫を演じた筒井俊作、主役となる男を演じた畑中智行の圧倒的な安定感はきっちりベテラン勢の領域なのです。

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