【芝居】「夜をつかまえに」空飛ぶペンギンカンパニー
2018.3.18 13:00 [CoRich]
85分。山王FOREST。18日まで。
西からやってきた先祖の国には「夜」があったという記録をもとに、それがどういう物かをひもとき、夜を探す調査のための飛行船。 新進気鋭の画家を乗せ各地をみた目を言葉と絵にして記録し、各地で食料を調達し、太陽光から「アカリ」を生成し燃料や飲料に変えながらの旅の途中、大きな海を見つけ、横断することを決断するが。
「夜」を探すための探査船。自由な発想をメンバーにも求めるリベラルさをもったチームでのスタート。スチームパンクというかソーラーエネルギーパンクというか、今の私たちとは明確に違う科学技術を持つ人々。彼らが探している「夜」は、かつて自分たちの世界にもあったのに今は無く、自分たちが抱える様々な問題を解決できる画期的な何かということだけが共有されていて、それが何なのかは明確には語られないし、彼らがそれで何を解決しようとしているかも明確にはされません。
自由な雰囲気はあっても、「ヒカリ係」が意見を求められることに戸惑ったり、絵描きは目で見て回ることだけをミッションとしていて祖国からは注目を集める立場であることなど、地位なのか民族なのか何らかのカーストがあることが匂わされる序盤。それでもこの柔らかな雰囲気は、物語が進むうちにいくつかの要素で不穏に変化するのです。
一つは、進入し捕らえられる女の存在で、夜に対して何かを知っている別の民族をやや異質なものを下に見ているというこの物語での世界観が垣間見えること。 もう一つは大きな海を越える飛行が長時間に及び食料が不十分で乗務員たちが飢えることで、それまでの柔らかな雰囲気は一変し、些細なことで苛つき喧嘩し、いがみ合うようになり、わずかな食料を奪い合うように人々が変化します。更には、不十分な補給のまま観測飛行を続けるうち、戻るべきか観測を継続するべきかでのチーム決定的に仲違いすることなのです。
柔らかに始まる物語に対して、中身は相当にダークな要素のオンパレード、チームの中でのある種の差別意識、ほかの民族に対する差別意識から、極限状態となった人々の悲惨な行動、さらには自分が生きのびることですべきことの選択、という悲劇。狭い空間の中、後半は希望ががりがり削られていく物語の運び、自分の中での着地点をどう見つけるかは難しい物語ではあります。が、世界のあちこちで起こっている、強い者が支配しようとする傲慢と、虐げられる者が奮起しても負けたり勝てたりのこのパワーバランスという意味で確かに今の私たちへの地続きの一つではあると思うのです。
途中で合流した女が飢餓の末に食べられてしまうことは唐突な肉の登場と残された首輪で表現されたりと言葉を使わずに表現しようというのは判りやすくしすぎないいい雰囲気。足りない補給に対しての作戦決行でゃたとえばインパール作戦のような感じはこれか、とも思ったりまします。
正直に云えば、 物語の落差がわりと激しく見える中盤に対して、後半は嫌な雰囲気から暴力がわりとインフレ気味でむしろ平板に感じてしまうことだったり、物語が必要とする人数よりも役者が多いように感じたりはします。思わせぶりに存在する絵描きは結局何だったのかも、ちょっと知りたい感じ。絵を描いて抱えて持っているうちに胸元に画材の色が付いてしまうことが気になるけれど、妙に色気になったと感じてしまうのは、ワタシの悪い癖。
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