【芝居】「天国と地獄」遠吠え
2018.3.25 18:00
[CoRich]
60分、3月25日まで王子スタジオ。当日パンフと同じ配役表がネットにあるのもありがたい。
高校の演劇部。卒業式でリボンをつけあう二人の女子高生。
それまでに書いたもので圧倒的に面白い「天国と地獄」は高校演劇で求められがちすぎるので代々禁じ手にしている「等身大の演劇部の話」なので上演できず、休部してしまった二年生。卒業公演の脚本は一年生が書くことになったが、それまでは面白い脚本ができたのに、突然スランプになってしまった。大声で叫びながら試行錯誤して書き始めたのは宇宙とワタシについて一人の話の二人芝居。
高校の演劇部員たち。三年で入れ替わっていく世代交代とその上下関係の流れ、同期の間での距離感を瑞々しく描きます。
10年後に再会し芝居をしようという約束をするもそれぞれの生活があって叶わない「天国と地獄」という劇中劇の片鱗を挟みながら、時間軸を細かく前後に動かし、部活動中にそろった場面、それぞれの同期だけのシーンとシーンを切り取りながら、手拍子一つで鮮やかに切り替え、高校演劇のフォーマットである60分にぎゅっと圧縮し、スピード感のある一本になっています。
全体に若い女性たちの物語はあまりに眩しく感じるアタシですが、ずっと観ていたい楽しさ。それは、
ずっとこの時が続いてほしいという楽しさとその中の苦悩と。それは一瞬で過ぎ去ってしまうという青春な頃のほんの一瞬の美しさと、しかし「ずっと芝居しようね」という言葉をかけることが、それがそうなってもならなくても呪いのことばになってしまうこともまた青春時代、という感じでもあって。
それぞれの同期でのキャラクタの棲み分け、上下関係が歴然と存在するけれど面白いものを作り出す作家はまた特別な位置づけでもあるというのはたぶん演劇部独特な雰囲気なのでしょう。演劇部の経験はないしワタシですが、きっと将来は演劇はやらないだろうな、と描かれる劇中劇はなんか今時っぽく感じます。
三年の世代の上下関係の話だけれど、それぞれの世代の横のつながり、世代の間のギャップ、時に世代を超えて下の世代が伸していく感じ、あるいは上の世代が退場していく感じは、それぞれ十年を隔てた三十年の世代の話しに敷衍できそう、というのはちょっと踏み込みすぎなワタシの感想です。
演劇部部長を演じた石黒麻衣、同学年を演じた小島望はきっちり物語を廻して居るだけで安定感を醸すほどに。
「天国と地獄」を書いた二年生を演じた橋本美優は存在感が圧巻。脚本を期待されるが卒業公演のは書けなくなっている一年生を演じた永田佑衣は叫び声や病んだ雰囲気など少々エキセントリックだけれど、重圧を受けている感じがデフォルメされている感じ。
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