2018.3.17 19:30
[CoRich]
短編ショーケースの人気企画・15 minutes madeの主催団体がつくってきた作品群の再演する企画(1)の二回目。
95分まで、19日まで北とぴあ・ペガサスホール。
ヤクザとして生きていくしかない町の高校の野球部。女人禁制を貫いてきた野球部は女子マネージャがベンチに入ることすら伝統的に許してこなかった。ヒーローは居たけど、水死体になって発見されたりして、その町で生まれた自分たちの行き先には希望は持てない。が、今年はなんとしても甲子園を目指すのだ。
「男達だけえ踊ろうぜ」(1)
高校の頃に告白して、その返事をもらわないまま5年が過ぎてキャバクラ嬢として働く女。告白の相手は地元でホームレスになっていて毎日見かけるけれど、まだ彼の事が好きで。彼が駅で電車を待っている.大荷物を抱えた女が追いかけてくる。「東京へ連れてって」
(1,
2)
伝統ある応援団。女人禁制だが、団員の一人が女であることがわかる。女は応援団に入って行方不明になった兄を探している。部室の奥に控える大総長は歴代の男の中の男が融合した何者かだった。その中に兄を感じる妹は兄を返せと迫る「男逹だけで踊ろうぜ2」(新作)
楽屋の鏡前、化粧をしている俳優。新人らしい若い女が女楽屋が一杯だから鏡前を借りたいとやってくる。ぎこちなく下手な化粧の慣れない女を優しくエスコートする「上手も下手も(かみてもしもても)ないけれど」
(1)
「男達〜」は、
まともな職はなくてヤクザでしか生きていくしかないような町の野球部。甲子園に進んで勝ち進んでプロになったとしたって最後はヤクザからは離れられない将来の希望が持てない町に生まれ育った男たち。女子マネは懸命にベンチ入りを訴えるのに伝統がそれを拒んでいて。甲子園に行っても希望が持てない男たちがそれでも甲子園を目指すのは、女子マネをベンチ入りさせるためのOBとの交換条件というラスト、悲壮感と、しかしここ一番戦いに赴く姿はカッコイイ。Mrs.fictionsにはいわゆるヤンキーたちの悲哀を格好良く描くのが結構あって、劇団の一つのカラーだったりもするのです。
「東京〜」は何度か上演されている一本。今作だけはMrs fictionsではない演出家の手によっています。
あくまでもフラットな感じで淡々と進む物語の持ち味は変わらないのだけれど、何年もかけたラブレターに勝てないと思って諦めた小説家志望のキャバ嬢の二人、揃っての上京なのに暖かさや希望よりは、もっと寂しい感じ。一方的に楽しい筈の女の側ですらそうで、それは何年も好き合ってきて、落ち着いたゆえの男女の温度感ということかもしれませんが。ゴキブリがちょろちょろする、という演出がいままであったかよく覚えてないのですが、どうだったっけ。
「男達〜2」は
歴代の男が融合した大総長というファンタジー。男はそういう融合をするものなのだ、ということをあたかも男だけの秘め事のように説明するのはちょっと面白いし、ある種のホモソーシャル感もあって物語によくあっています。その中で女を感じてしまってその気持ちが抑えきれなくなって服を切り裂いてしまった(宇宙人みたいな異質な者としてるのはちょっと巧い)ことで明白になってしまったけれど、皆薄々気付いていたのに「やわらかく丸みを帯びた」ものが部室に居るというだけの気持ちよさを守りたくてみな口にしないで居たというのも甘酸っぱい。兄妹の道ならぬ愛ゆえに兄が救い出されるラスト、中二感一杯だけどすとんと物語を終わらせるのは巧い。
劇団のもう一つの持ち味、ちょいとバタ臭くお洒落に男女を描くものの一本「上手〜」は、初演と同じ座組で演じられました。楽屋の鏡前、若い新人女優が来て化粧して徐々にキレイになって、という序盤から加速度的に
口調が互いに砕けてきて、結婚して、浮気の危機もあって、年月が経っていく二人の姿を早送りで。
鏡前のこの場所こそが人生、そこで二人歩む姿は愛おしいのです。男を演じた岡野康弘のこのスマートな持ち味がカッコイイ。女を演じた豊田可奈子も若いと云うより幼い序盤からレディになり、老女になりという鮮やかなグラデーションが見事。ちょっとすすり泣く声が客席に聞こえたりして。
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