【芝居】「疫病神」ピヨピヨレボリューション
2018.2.25 13:00 [CoRich]
25日まで北とぴあ・つつじホール。105分+終演後にイベント。
可愛らしくうまれ、ハッピーに生きてきた。演劇をすることが好きでも最初の劇団はいろいろあって抜けることになったけど、新しい仲間と立ち上げた劇団は楽しいし、少しずつ手応えは感じてる。
酒を飲むのが好きで暴れて記憶をなくしたり、認めてくれなくて寂しい気持ちになったりするけれど、まわりのみんなは優しい、でも、寂しかったりする気持ちはどんどん溢れて、自分の心の中に「疫病神」を見つけてしまう。
可愛く生まれ幸せに生きてきた女、今は幸せだけれど、心の中にあるどす黒いものの存在に目をつむってきた女。それは酔っぱっていたり他人への承認欲求だったりという形で噴出し、その結果、精神科の診療を受けると決めたことで見えてくること。
治療だったり、その「疫病神」を退治しようというのではなくて、そういう種があり、そういう形で表出するということを自覚して、うまくつきあっていこうという物語は、エンタメの爽快さは抑えてでも、こういう心のことを誠実に描こうという作家・右手愛美のまっすぐな視線。
そのどす黒さのきっかけとなったのは、古巣の劇団で今は売れっ子の脚本家、腕はいいけれど女癖がわるくて、その毒牙にかかったこと。昨今、あちこちで見えてきている #meTooな社会の流れを取り込んだ形にもなっています。
このあたり、小劇場の演劇界隈でも無縁ではないということが(ワタシが男だし、一見の客だから気がつかなくて)最近になって露見してきたことでもあって、わりと自然にしかし緻密に組み立てられています。可愛らしいことが武器になる女優という役割を基準に、かつて所属していた劇団、その嫌な思いをしかけてきた男の作家は今では売れっ子になっていて、そこから飛び出した自分がやっているのは全力だけれど売れているかどうかでいれば見劣りしている劣等感。 それよりも彼女を傷つけるのは、元の劇団に未だ残っている女性の演出家なのです。作家がそういうことをしていたことを知っているのに、そこで食っていけるから、自分にはたまたまふりかからなかったから、その毒牙にかかる女たちを見て見ぬ振り、つまり見捨ててしまうのです。誰かの実体験なのかまったくの創作なのかワタシは知る由はないけれど、やけに説得力のある構図なのです。それは今年の米・アカデミー賞の少々オーバーなほどの雰囲気にも近い物語なのです
作家を兼ね、パリピから病的なところまでのフルスイングな右手愛美はきっちり主演を。医師を演じた渡邊安理、人を安心させるような声の説得力が役に良く合っていて。名前がちゃんとわからないけれど、ドラアグクイーンの役者はわりと外形的ではあるけれど、きっちりパワフルで相談できる幼なじみという細やかさも。「疫病神」のチームの男性の俳優もまたパワフル。
しかし、あの北とぴあ、上層階の眺めのいい部屋は会議室な雰囲気だったけれど、下層階にあるホール、こんなにもきっちり劇場だとは、ずいぶん王子に通ってるけれど気付かなかったアタシです。客席でちょいと気を遣いつつ、劇団グッズのシャツを着て、ペンライト(色が変わる、しかも劇団オリジナル)を控えめに振る前方ブロックの観客が微笑ましい。
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