【芝居】「今度は背中が腫れている」あひるなんちゃら
2018.2.25 13:00 [CoRich]
5日まで駅前劇場。80分。
会社の休憩室。
中堅の男子社員、本人は気づかないが突然背中が大きく腫れている。医者に行くように勧めるが、自分が休んだら会社が回らないと思っていてそれを渋っている。出世に出遅れている同期の男は自分の背中も腫れれば出世するんじゃないかと思っている。
背中が腫れる症状、医者は悪い病気ではないし感染しないというが、会社の中の他の人々にも同じ症状が現れるが、他の人々は少し休むだけであっさり治ったりするが、最初の男は頑として休む気はない。なんせ自分は凄い伝説の男なので休むと会社は回らない、という。
会社の休憩室に入れ替わり立ち替わりな人々の2,3人ぐらいの会話で進む物語。 突発的に背中が腫れるという出来事をきっかけに、会社で働いてそこで役にたっていることがほぼ唯一のアイデンティティな男、周囲の状況から休めば治ることが判ってもそれが変わらず、周りを貶めたりはしないけれど、そこまで優秀じゃないのに本人はいろんなことが自分の手柄だと信じて吹聴して、まわりはちょっと揶揄したりはしてもそこまで強くは指摘しないぐらいに、齟齬がそのままずっと続いているということの、ゆるさと不幸と。
何かを訴えたりが趣旨の芝居ではないけれど、ネットで言われがちな「自分は有能で休んだら会社はすぐに立ち行かなくなる」という自信。 上演期間中は、いわゆる「働かせ放題」法案の時期でどこか絶妙にリンクして感じてしまったアタシです。
3-4人程度の会話がつながる構成で、女たち3人の会話、今作に限らず好きなフォーマットなのだけど、わりと趣味も仕事に対する姿勢もバラバラで、おそらくはいつでも一緒というべたべたした感じではなくて、どこの気が合うのか傍目にはわからないけれど、程良い距離感で信頼している人々の会話が実に楽しい。
とはいえ、そんな会社があるかもしれない、そういう人が居るかもしれないこと、働きすぎとか会社のなかでのんびりな雰囲気ということなど、コミカルで誇張があっても、やけに説得力をもってぎゅっと箱庭のように現実にリンクした世界を描く確かな作家の力なのです。
背中が腫れ続けた男を演じた根津茂尚は、根拠なくフラットに自信を持つ男がやけに説得力。切れ気味につっこむ男を演じた堀靖明は得意技なキャラクタの安心感。 何にでも噛みつきがちな女を演じたワタナベミノリ、ぼんやりに見えて実は仕事はできる女を演じた田代尚子のずれっぱなし会話が楽しく、それを困り顔で包み込む石澤美和の安定感。 若い男を演じた澤原剛生、微妙に身体も視線もぎこちないけれど目が離せなくて、青山円形に突如現れたナイロン100℃大倉孝二を思い出す私です。その男と絡む女を演じた宮本奈津美は、笑顔と愛嬌で男たちに混じって人気があるという感じの説得力、やけにかわいらしい。
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