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2018.03.28

【芝居】「地上10センチ」ガレキの太鼓

2018.3.11 18:00 [CoRich]

18日までアゴラ劇場。90分。

健康診断で病気が見つかり、余命五年と宣言された男。いままでのぱっとしない人生、自分が主役の葬式ぐらいは参列者を感動させてみんなの印象に残りたいと考え、何もかも取っ払って斬新な葬式を開きたいと葬儀屋に相談する。

序盤では友人の葬式という身近さからスタートして、全然見送る人のいない葬式で健気に独り喪主を務める女子高生にいたたまれない気持ちになるという体験を起点に、限られた余命を知った男、自分の葬式について想いを馳せるという物足りの骨格。

妻や兄弟たち、友人たちや葬儀屋までも巻き込んで、「斬新でどこにもない新しい」葬式で、参列者を感動させたいという気持ちの暴走。葬儀屋が語るそれぞれの儀式の意味を小ネタ的に挟みながら、「斬新な」とは何かを考えているよう。もしかしたら、これは別に葬式に限った話しなのではなくて、芝居という芸術だったり、小説とかだったりが、承認欲求や自己顕示欲として発露したもので、クリエータ誰もが、世界のどこにもない新しいものを作り出してみたいと考えることとの相似形に見えてくるアタシです。

伝統的な葬儀の型が持つ安心感に収束しがちなのは、芸術だって過去を踏まえたものの安心感の相似なのかと思ったりもします。今作はその収束と斬新の行き来の苦しさを作家が思考実験するよう。頭の中で解決しきらず、要素を全部並べて人を動かし眺めて考えているような雰囲気を感じるのです。それは悪いことではありませんが、その過程の苦しさをそのまま出したような感じはあって、一生懸命にそれぞれのアイテムや行われることに意味を真剣に考えて付けているけれど、結果的には、そう斬新とも云えない葬式で、単なる乱痴気騒ぎな感じにもなっていて、終幕事故で死んだ弟は伝統的な葬式のままだったりもして、そういう意味では葬儀は、そうそう一足飛びに斬新な感動なんてものは生まれにくい

役者はそれぞれが複数の役を演じます。 葬儀屋を演じた日比野線は戸惑いがあっても元気で前向きな男を好演、印象に残ります。 死期が近い男の元カノを演じた小瀧万梨子は、男の妄想の中の理想、さっぱりとフラットな関係のままでいようとする強い意志が格好良く、なにより妄想をもたれ続けるということに対しての説得力が圧倒なのです。

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