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2018.02.26

【芝居】「卒業式、実行」アガリスクエンタテイメント

2018.2.17 14:00 [CoRich]

25日までサンモールスタジオ。120分。2015年作(1)にもよく似たシチュエーションをバックステージコメディとして上演。/P>

高校の卒業式、生徒によって決められた式次第を実行する伝統があるが、赴任してきた校長は国旗を掲げ国歌を歌うことを押しつける。当日になっても式次第が決まらない。

校歌斉唱と国旗掲揚を求める校長とそれにあらがう生徒、グラデーションのように立場の異なる教師たちという構図。国旗と国歌などいわゆる愛国心のための教育をめぐる文科省と教育の現場、二兎社・「歌わせたい男たち」を思い起こさせる題材ではありますが、今作は、その構図はすでに存在して変えられない前提で、校長だってその歯車の中の一人という背景になっていて、明確にイデオロギーで行動するPTAを除けば、物語を駆動しているのは「生徒たちが決めた式次第とスタイルで実行しなればいけない実行委員会」と「校長が押しつける国歌と国旗」を、どう現場で辻褄を合わせノイズを排除してショーマストゴーオンするかという物語になっています。

物語の構図からすれば国歌国旗という大きな題材で振りかぶらなくてももっと身近な題材でもかまわないような気もしますが、生徒の自治の伝統が息づき教師たちもそれを是としている高校の中で、それを押してでも自治の伝統を崩そうとする圧力という意味では確かに国旗国歌はどこでも起きていそうな「動かしがたい上からの圧力」という題材として選んだのかもしれません。ここが動かせないと設定するあたりが若い世代という気もするしそれに小さく絶望するのはまあワタシのよけいなお世話だけれど、イデオロギーに踏み込まないのも一つの矜恃ということかもしれません。

たとえば生徒案では重要なはずの美術部の絵がそもそも出来てないなど ばかばかしさが適度に挟まり、コメディとしてのスピード感をもっていて、問題解決というよりは落としどころを探っていくなかでの無理矢理感はシチュエーションコメディのおもしろさを詰め込んだエンタメの楽しさでもあるのです。

全体に若い座組で同質になりがちな雰囲気の座組の中でとりわけ異質に目立つのは生徒自治の伝統に理解を示し、あわてている全体の中でひたすらゆっくりと考えることを求めようとすこしズレた雰囲気を示す美術教師を演じた中田顕史郎で、もちろん彼のいままでを観ていればバリエーションの一つではあるのだけど、新しい座組で新しい観客に出会うことはなんかワタシまでも嬉しかったりもするのです。

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