【芝居】「三文オペラ」神奈川芸術劇場P
2018.2.2 19:00 [CoRich]
20分休憩込みの3時間、4日までKAATのあと札幌。ワタシはタイトルだけは知っていたけど粗筋すら初見です。
乞食を束ね縄張りを調整する男ピーチャム商会を名乗る。娘には玉の輿を夢見る夫婦だが、娘は結婚相手を見つけてきたという。金持ちではあるが泥棒の親玉、警察にも手をまわして謳歌している。 結婚を潰したい娘の親、警察に訴えるもなかなか動かず、しかし刑務所には入れて快適な日々を送るが、 人々の訴え、民衆がこれだけ動けば警察長官は友人とはいえ動かざるを得ない。果たして絞首刑になる。
元々が音楽劇で、オペラとしてもミュージカルとしても上演されることがあるということすら知らずにみたアタシです。wikipediaを信じると、大幅に再構成しつつも、物語どころか、思想の根幹まできっちりパッケージしつつ、結果として今の生活をするワタシに地続きに感じることも多くて、なるほど、時代が変わっても、権力が絡めばおなじように酷かったり愚かだったりすることを描くという、古びない物語の力を感じるのです。
とりわけ印象的なのは、舞台両袖でスタンディングのP席なる観客、(開場1時間前に集合というハードルが超えられず行けなくて無念)、キッカケにあわせて歌ったりという緩い演出家と高をくくっていたけれど、この役割は、「民衆」を具現化して(P席以外の)観客が敵対者として目の当たりにする、ということの効果に心の底から驚き、その波動にワタシの心が動くのです。
それは 今のワタシの気持ちにつながります。金持ちとか政治家だけが肥え太るというような。ワタシだって今のところPチャム商会(=貧民)側ではないと思うし、そこそこの金額のチケットを買ったP席の観客だって貧民ではありません。それは初演からきっと変わりません。ある種のロールプレイではあって、それはもちろん現実にそうある人々とは違うけれど、せめてそういう人々の存在を認識し、想像力を働かせること。生の舞台の迫力だから呼び起こされる、エンゲキの力を感じるのです。
元々の三文オペラがどうかはわからないけれど、いくつかの整理はされているようで見やすく、しかも民衆と権力のせめぎ合いという、おそらくは演出家の意図がきちんと体現されていて見事な舞台なのです。
乞食の首領を演じた白井晃が実に見事、ときに狂言回しっぽいけれど、娘を思い突き進む人物の説得力、その妻を演じた村岡希美、こちらもコミカルが楽しくしかも美しく。 警察署長を演じた高橋和也、権力であるく中年男、悲哀も背負いつつの厚み。 娼婦を演じた貴城けい、重厚な歌、神々しいのです。
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