【イベント】「ナンチャテおちゃめ宇宙」(月いちリーディング / 18年2月)
2018.2.3 18:00 [CoRich]
劇作家協会のブラッシュアップリーディング。本編120分、そのあと休憩を挟んで観客を交え90分弱のブラッシュアップの議論。
足に障害を持つ女の子は母親とともに帰ってこない父親を待っているが、それを見かけたテレビ局のADが父親を見つけるために広く呼びかけるべきだという誘いから、上京し障害者バラエティで人気を博すがすぐに降板の憂き目にあう。
原発事故をきっかけに富山一県に原発を集中する国策は、天皇の「お気持ち」を利用してはじまり、農協連の反対にもかかわらず、県民の目立った反対もなく20年の歳月をかけて成し遂げられた。前の原発事故は係員が「宇宙の姿を見たい」と意図的に冷却を止めたことで起き、逮捕収監された。
20年経って脱獄し、再び富山に戻ってきた。あのときに作っていた爆弾はそのままに、再び宇宙を見たい、と行動を起こす。
リーディングとしては少々長くがっつり120分。役も多く、複数の役を演じての上演。 放射線障害の娘、父親を捜すためにその身体を晒して東京でバラエティに出ることで始まる物語。原発事故が起こった場所だからこそ、そこに原発を集中させてエネルギー問題を解決しようという思惑が政府にあるということを物語の下敷きにしています。物語の骨格としては、かつて原発事故を起こした男が20年の時を経て再びその先を見たい、という突き進む衝動が後半を駆動します。
童貞天皇とかそれを利用しようとする思惑とか、バリバラ、レイプ、原発事故とそれを望む男などさまざまな要素を詰め込み、ところどころ露悪的な物言いをしたりもします。 それなのにところどころで、そうせざるを得ない人間の衝動や翻弄される人々を細やかに描くところもあって、ありていにいえば荒削りでアンバランスなのだけど、人を傷つけるであろうことも含めて作家が自分で背負う覚悟を持ち、意図的にこの世界を描いているのだとしたら、それはたいしたもので、背負い続ける意味があるのかなと思ったりもします。
たとえば、バラエティ降板やレイプなど酷い目にあった娘が帰郷の段に至り酷い目に遭ったことを自覚し、その瞬間はその感情に気づけなかったけれど、自分が怒っているのだということに気づくシーンはちょっと凄みがあると思います。あるいはきらきらと輝く光を見たいと原発事故を意図的に起こし、その気持ちを捨てきれずにもう一度同じことを起こしてしまう男の存在も、難しいバランスの、しかし魅力的な人物ではあるのです。
初演時点ではかなり酷評を受けたのだといいます。確かに露悪的な題材をわりと軽く扱う語り口でそれが大量に詰め込まれている時点で受け入れがたい観客がいそうなことも理解できます。対してこのリーディングでは、枠組みとして「いいところを挙げる」から始まる枠組みと決めていることもあって、酷評があからさまにされることはなくて、むしろ面白いという意見が多くなるのはこのイベントのバイアスではあります。あるいは身体の障害もリーディングでは形としては見えないというのもプラスに働いた可能性はあります。 確かに露悪的だけれど、その中で描かれている細やかで臆病な感情にプラスを見いだすことができるのはこのリーディングの美点。正直に言えば、もう少し登場人物が整理されてコンパクトになればな、とは思います。
父親を演じた武子太郎は時にニヒルだったりするからか、物語は違うのに「太陽を盗んだ男」を感じてしまうアタシです。かっこいい。 娘を演じた藤本紗也香は力強くしかし不器用に生きる人物が透け見えるよう。 天皇などを演じた小林至は年齢を重ねるにつれての奥行き。思えば彼が大学生の頃から観ていて、そりゃワタシも歳をとるはずです。
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