【芝居】「スピークイージー」やみ・あがりシアター
2017.12.27 19:30 [CoRich]
禁酒条例が施行された東京を描く物語。12月28日まで、荻窪小劇場。100分。 オリンピックを前に禁酒条例が施行された東京。飲み会でのコミュニケーションが多かった小さな会社の忘年会が同じビルの元居酒屋で開かれる。酒がないままで盛り上がらない。遠くでは禁酒に反発するデモが起きている。 みんな酒が飲めた頃のことばかり思い出す。
国際社会での首相の失態に端を発しオリンピックまでの時限措置としての都内限定での禁酒条例が施行された東京だけれどそれに反対するデモも遠くでは起きていて。いわゆるコンプライアンスゆえに会社の呑み会としてはどうしても酒を出すわけにはいかないけれど、どうにも盛り上がらない会話。一年ぐらい前のこの会社のシーンを挟み、テンション上げのコールも当たり前で呑み会でのコミュニケーションが重視されていた会社だということを描きつつ進みます。
現実の強行採決しそうな政治とかデモとかのありそうな雰囲気をまとい、(今作での成立のロジックとは異なるけれど)現在の少々ヒステリックなほどの嫌煙が完成の暁にはもしかしたら次のターゲットは酒になるんじゃないかという恐怖を感じるアタシには、コミカルな語り口とは裏腹に、ちょっと背筋が寒くなるような感じでもあるのです。
飲みサー出身で飲んでばかりとか、飲み慣れないとか、あるいは飲むことが日常とか、飲んだら記憶がないとかなさまざまな「ありそう」な人々を描くうち、呑み会での会話そのものを覚えて居なくても参加すること自体だったり、参加したことで見えてくる人の雰囲気だったり、素面とは異なるもう一面だったりということがコミュニケーションとしての飲み会の意味だと描きます。
呑み会とコミュニケーションを巡る話を繰り返し、さまざまな人物を描く前半。対して後半は、一口酒を呑んだ後の記憶をすっかり無くす女を視座にしてがらりと雰囲気が変わります。実は亡くなっている男、素面での無口な姿の記憶しかなく、宴席で盛り上がっていた彼の姿を、その女は覚えてないこと、それゆえにまだ葬り去ることもできないままに抱えている男の名残。
宴会を巡る過去と現在の行き来は、なるほど後半で描かれる亡き男がその場に居た生前の姿を描くのだということは後からは理解出来るけれど、正直にいえば少しばかり前半、延々と続く飲み会の風景で物語の行方が見えずもうすこしシンプルだと嬉しく思うワタシです。
冒頭、やけにレベルの高いアカペラなコールがちょっと凄い。専務・あらい日向と共に歌った女社長を演じた木下祐子はやけに可愛らしところもあってちょっとめずらしい。
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