【芝居】「郷愁の丘ロマントピア」ホエイ
2018.1.20 14:00 [CoRich]
ホエイが北海道三部作( 1, 2)、 と題したシリーズ、第三部。21日までアゴラ劇場。110分。
かつては三菱・大夕張炭鉱で栄えた町が、炭鉱閉山に伴い一気に過疎化が進み、ダムの底に沈んでいる。その湖面を望む駐車場に集まり、もう一人の到着を待っている。かつては炭鉱夫だった男たちもずいぶんと歳を取っている。他から訪れたツーリングの若い夫婦と合ったり、昔のことを思い出したりしている。突然、仲間内では兄貴分と慕われた男が倒れ、救急車を呼ぶが出払っていてしばらく来ないという。
観光地となっているいわゆる北炭の会った場所とは別の、三菱系の炭鉱で栄えたが過疎が進みダム湖に沈んだ町、そこで炭鉱夫として働いていた男たちの若かりし過去と、歳を取った現在を描くものがたり。妻子を亡くして以来借金をしてまでパチンコに明け暮れていたり、孫が付きそう車いす生活だったり、あるいは無職の息子を自分の年金で養っている男だったり。時代の変化は残酷に彼らをくすんだ生活にしているけれど、他にできることがない、と嘯きながら危険と隣り合わせ、間違いなく当時の日本の経済成長を支えていた男たち。そこに確実にあった人々の営みと変化をシンプルな舞台で描くのです。
もちろん単なるノスタルジーでは描かないちょっとした底意地の悪さも持ち味。ツーリングの夫婦がこの土地生まれの祖父を持つと知り急にフレンドリーになると、それは行きすぎて、この土地に引っ越してこいだの、子供を産めだのと勝手なことを云ってみたり説教したり。頑固だったりかつては正しいと思われていたかもしれないことを変えられない、いわば「老害」なところもきちんと折り込んで、リアリティを持たせるのです。
借金をしてまでパチンコに明け暮れる兄貴分の男、そうなるとわかっていて金を渡し続ける男の関係は、終盤に至り、龍角散の缶に骨を入れて持ち歩く妻への愛情、そして家族のように仲間とくらしてきた濃密なコミュニティが今もあることを描き出す見事さ。
あるいは、倒れた老人、救急車は呼ぶものの、思い出を語り続けて、何をするでもなく、焦るでもなく、ただただ静かに悪くなっていく状況の中にたたずむ人々。夕張が、あるい日本が緩やかに衰退している今の私たちを見るよう、と感じてしまうアタシです。
老人たちを演じた山田百次、松本亮、河村竜也、武谷公雄はコミカルさも嫌なところもきっちり内包した深みを全員がきっちり見応え。
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