【芝居】「ハマの弥太っぺ」045 syndicate
2018.1.13 19:30 [CoRich]
映画「関の弥太っぺ」(wikipedia)にインスパイアされた佃典彦の新作。110分。15日まで横浜・ベイサイドスタジオ。
男二人の殺し屋が北の最果ての無人駅に居る。そこに現れたふんどし姿の男。亡き妻の復讐に燃えてならず者たちを追いかけてきたが、隙を見せた女に身ぐるみ剥がされ、追って匿われている女を見つける。男たちの闘いの流れ弾で女は命を落とすが、今際の際に連れていた若い娘をある宿に連れて行ってほしいと頼まれる。ならず者たちを追い、ボスを追い詰めたが、さらなる黒幕が居ることを聞かされる。
段ボールで宿を提供する流浪の宿屋の主人は娘の行方がわからず、娘が一枚だけ出した曲でのど自慢に出場し娘を探そうと考えている。
昭和の横浜を舞台にした映画っぽい雰囲気をベースにしつつ、北斗の拳もしくはマッドマックスな世界がこの舞台の外では起きているという設定。守るべき気持ち、または守るべきものを失ったこと、あるいは守るべきものなどない人々のグラデーションで高いテンションのまま、物語は圧巻のエンタメなのです。 もちろん、あのときの昭和の映画で描かれているものをそのまま、というわけにはいかない現在を背景に、マッドマックスが「怒りのデスロード」でリブートしたように、男と女のそれぞれの立ち位置をきちんと現代の私たちから地続きの物語にリファインしているように感じられるのが実に良くて、しかもきっちり面白いという、確かな筆力と、それを支える役者と演出なのです。
中盤、ボスと目された男とその下っ端が執拗にいろんなキャラクタが入れ替わる楽しさ、あるいは(ホームレスが使うように)段ボールを提供して流浪の宿屋を名乗ったりと、濃密というよりはこれでもかという詰め込めこんでエンタメに仕上げるのです。あるいは、男女の一夜を影絵だけで盛り上げるレトロもかっこいいのです。
終盤はあからさま、お涙頂戴な語り口の片鱗が見えたりするけれど、その親子の情感は繊細に描きつつ、泣かせるように作らないのも巧いのです。
主役を演じた今井勝法、がらっぱちから弱気まで鮮やかにグラデーションの機微。相当な負荷だとおもうけれど、ちゃんと走りきります。物静かな男を演じた吉村公佑、実にかっこよく、中盤の下っ端キャラのあれこれのテンションも見応え。宿屋の主人を演じた寺十吾は少々卑怯な感あれど、あの個性ある声で演じられるなにか異型なものすら感じさせる安定。ボス的な男を演じた大西一郎はもう、ただ単に楽しそうがアタシには楽しい。まあ、少々飛び道具だな役割だから成立するってことかもしれませんが。
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