【芝居】「もう少しだけましな理由。」クラゲズ
2017.11.24 [CoRich]
安東桂吾と太田善也によるユニット、旗揚げ公演。 26日までワンズスタジオ。休憩10分込みで115分。
一軒家に住む姉を妹夫婦をが訪ねる。姉と連絡が取れなくなって一週間が経っている。姉は作家と結婚しているが、作家は一度はヒットを出したものの、そのあとが続かず稼げていない。
しかし妻は起き上がりお茶を淹れたりしている。性格は別人のようだし頭のニット帽には血がついている。その帽子は池袋のサンシャイン通りで神々しく見えた知らない男から貰い、半年以内に殺されると予言されたのだという。
片言の男が上がり込む。作家の妻と月に一度は会いつづけているという。
二組の夫婦と一人の男を巡る物語を根幹に。夫婦の間の記憶違い、その勘違いを正せるとか正せないとか、相手が浮気しているかもという疑心暗鬼の物語を纏います。 一度はヒットしても稼げなくなっている男とそれを支えている女。女が不満をもっているかどうかは明確には語られない気がしますが、それは内に秘めた、ということは伝わる役者の力。女性の視線で世界を描くのが得意な作家ですが、どちらかというと男の視座から、女性を不可思議な存在であったり、きっちり正しい存在であったり、あるいは押されるような強さを持つ者、という畏敬すら感じるように描かれた物語だと思うのです。 男の側のある種の理想というか、現実の女性に対しては、その裏返しな恐怖心というか。
殺してしまった男と殺された女。そう簡単には覆らないはずの生死があっさり乗り越えられること、それによって性格がまったく替わってしまうこと。堪え忍ぶように物静かだった女の内側にはこんなあけすけな性格が秘められているかもしれないというのも巧い語り口。云えなかったことを云う存在もまた、不可思議なことなのです。
心配して訪れる妹夫婦だけれど、こちらもこちらで問題を抱えています。妻の記憶違いは親戚だけれど、夫はバツイチ再婚なのに前の妻との浮気のシーンを妻と勘違いしていて。本を読んでるとか、という問答も、ちょっと弱みというか、男のダメ加減を描きます。
作家を兼ねる太田善也は片言の怪しい外国人を演じさせたら逸品なのを久々に観られて嬉しいアタシです。 妹の夫を演じた安東桂吾は後ろめたいことは隠しつつ、ちゃんとしたように見える男をしっかりと造型。 売れない作家を演じた坂口候一は激昂の怖さ、静かな会話とのギャップというか振れ幅が圧倒的なのです。 姉を演じた市橋朝子は、物静かでしかし暗い感じと、あまりにもあけすけなキャラクタの落差、 妹を演じた武田優子は美しいけれど、負けん気の強さというキャラクタがすてき。 この姉妹二人の会話、いじめられたなど話す二人のシーンが実にいいのです。
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