【芝居】「ちゅらと修羅」風琴工房
2017.12.10 19:00 [CoRich]
詩森ろばが長く続けてきた劇団の最終公演。名前が替わって続くことは発表されていますが、日英含めた名前の素敵さが名残惜しすぎる130分。13日までスズナリ。2016年に外部へ書き下ろした一本ともつながります。
沖縄に関するドキュメンタリー映画を見た直後、沖縄での基地移転に反対する人々に会いにいこうと考えた若いカメラマン(田島亮)。現地で人々に会うが、そこで不思議な格好の男に出会う。
この土地で起きたこと、琉球王国から太平洋戦争を経て基地に囲まれ、悲惨な事件が次々と起き、いままた県内だけで基地が移転しようとしているそれぞれの場所へ。
名護への空軍基地移転を阻止する、しかし非暴力を貫く人々を中心に据え、その人々を訪ねる人、そこに合流してきた人、その地で暮らし酷い目に遭った人々。そうなってきた歴史、地勢上のこと、政府がしてきたこと、政府に抗う人々。沖縄が抱えることをぎゅっと濃縮して描くという明確な意図が芯にあるうえで、それをテンポを落とさずポップに描くというのが作演の凄さなのです。
たとえば、語り部として機能させるセジ(佐野功)の存在。時空を自由に越え、舞台上にSF風味に設けた多くのモニタ画面で、わかりやすく、しかしテンポを落とさない工夫。あるいは広場のように設えられた舞台、バンクをつけてトランポリンを置いて(実はそれほど若くない)役者を跳躍させること、あるいは、沖縄民謡のリズムを舞台上で叩きあるいは音を出すというライブのような雰囲気。
2時間を超える上演時間をもってしても、つながりを意識させつつ、全体の印象は点描という感じは否めません。が、それは、あまりに多くの問題を抱えそれが解決されないままに時間が過ぎている沖縄ゆえだという現実だとも思うアタシです。
左に寄ってる自覚のあるアタシですが、劇中の台詞にある 右も左もない、生活なのだということはとても腑に落ちるのです。女たちの名前は生活用品(なべ、とか)にするのだということなど、地に足を着けて生きて前に進むことこそが尊いこと。センセーショナルではなく、いつ、どういう状況でそうなったかを淡々と語るシーンが延々と続くシーン。とりわけ女たちが遭うレイプの数々。私には耐え難いほどに長く続くシーンで、その現実と隣り合わせに生きている人々が今現在でも居るということを強く思い出すのです。
沖縄出身の役者やスタッフが居るかどうかはわからないけれど、絶妙に奄美・沖縄のイントネーションが実に私には心地いい、というのは祖父母(鹿児島ですが)がそうだったなぁ、ということがアタシに働きかけてくるということかもしれません。
カメラを構える女・アマミクを演じた林田麻里はとても美しく凛として、子供も兼ねて地元の女を演じたししどともこ、娘を演じた白井風菜もまた美しい建築士を演じた井上裕朗の誠実に一人で戦う(別の役者が、官僚を演じる)格好良さ。婆を演じる西山水木の力強さ。人々を束ねる男を演じた杉木隆幸、中野英樹も人々が頼り、集うという説得力。
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