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2017.12.15

【芝居】「熱狂」チョコレートケーキ

2017.12.9 14:00 [CoRich]

劇団の人気作らしいのですが、ワタシは初見です。19日までシアターウエスト。125分。

ミュンヘン一揆を起こすが失敗し禁固刑を受けたヒトラーは、今度はクーデターではなく合法な方法で権力を握ろうと考える。ナチ党としての国政選挙を重ね、大統領戦には敗北するも国会では第一党にまで登りつめ、首相指名、さらには独裁を手にする。

第一次大戦後、小さな党からあっという間に合法的な選挙で独裁を手にするまでの軌跡、語り部となる世話係の視点から、周囲の幹部たちを時に恫喝し、時に演説によって人々を巻き込み服従させていくさまを描きます。 自分の周りの幹部たちも、従順だが凡庸な者、優秀だが思想に差がみられるもの、あるいは友としての立場を重視するものなどさまざまに。実際の会話と云うよりはぎゅっと圧縮し、ごく近い人々がヒトラーに魅せられ巻き取られていくさまを細やかに描くことで、舞台では描かれない一般の人々の「熱狂」が生まれていく様を描きます。

名前ぐらいは聞いたことはあっても、何度か出てくる「指導者原理」も「ミュンヘン一揆」も知らなかったぐらい、この手の史実にとことん疎いアタシです。ヒトラーに対して友人という立場を取る者、ナチ党には社会主義を取り入れることが必要だと考える者、美しい国の完成に向けて高度な完成度をもった宣伝をつくりだす者、上流階級出身で国の英雄という立場を存分に生かす者。ナチ党の理想と、それぞれの思惑と。ヒトラーというある種特別な存在に対して心酔するのか、あるいは表面的な従順さの裏に別の思惑が存在するのか、さまざまな人々との密室での会話だけで紡ぐのです。おそらくは史実に忠実な流れをぎゅっと圧縮したつくりなので、このあたりに詳しい人にとっては評価は分かれるところかも知れません。

若者たちの強い支持を受けて、彼の考える「美しい国」は作れるし、「取り戻す」ための犠牲は仕方ないし、それはたいした問題ではないと考える人物。良識はあったはずなのに止められない人々。特殊な出来事ではなく、普通の人々がその狂気を支持してしまうということが、だんだん自分の身近に迫りつつあるな、と感じる昨今は身に染みるのです。

終幕、セピア色のような写真、これは過去のことだけれど、しかし、またあるかもしれない怖さを印象づけるのです。

ヒトラーを演じた西尾友樹は力強い声、人を取り込んでいく人垂らしという人物を高いテンションで演じきるのです。上流階級出身の英雄を演じた中田顕史郎は気持ちを隠しつつ抜け目ない男の説得力。突撃隊を率いる男を演じた大原研二は少々がさつな荒くれ者の役はめずらしい気がしますが、情に厚い感じもふくめて印象に残ります。

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