【芝居】「墓掘り人と無駄骨」MCR
2017.11.12 15:00 [CoRich]
MCRの新作。110分。13日までスズナリ。
寝取られた彼氏に未練がましくストーカーを続ける女は、男の注意を引こうと治安の悪い公園に赴いていて、偶然、背中に包丁が刺さった男を助ける。男はひと目で恋に落ちるが、痛みを感じない優秀な殺し屋だった。
両親を殺された男は友人の勧めで霊媒師と一緒にその犯人を探すことにする。残留私怨を辿り行き着いたのは、治安の悪い公園だった。
痛みを感じない冷徹な殺し屋と男を寝取られた女の恋物語、殺し屋が暮らすホームレスの集う公園。あるいは両親を殺された男の犯人を捜す旅。いくつかのつながりを中心に物語が進みます。 いくつかのシーンはやがてするするとつながり、終幕、大きな一つの物語に収束するのが本当に見事。 昨今わりと中年にさしかかった男の寂しさを強く感じる作風が増えてきましたが、今作はしっかりエンタメの要素を取り入れつつ、家族の物語をしっかりと描ききるのです。それは終幕で明らかになる家族の姿、その喪失の理由は実はうっちゃって描かないのもメリハリがあっていいバランスになっています。
それでも、やはりちょっと不器用な人々を描く作風は健在なのです。 背中に包丁が刺さったままの男だったり、フられた恋人を振り向かせようとレイプされると煽る女、目玉くり抜くぐらいの怖いことを云うのに励ましのお手紙を見舞いとする殺し屋のボス、ホットパンツでアンニュイが過ぎる霊媒師など、強烈なキャラクタを配しながらも、描かれるのは不器用な人々の恋物語や憧れる気持ちの素朴さなのです。
恋人の男が寝取られてなお、諦めきれずにストーカー気質になっている女。寝取った相手の女が慇懃無礼よろしく、表向きは丁寧にしかし相当に罵ってる言葉をなげつけるシーン、そこから表向きは激高せず静かなのに、静かに切れる殺し屋のシーンが圧巻。笑顔での会話が容赦なく、どんどん圧力を強めていったあげくの爆発のパワー。
痛みを感じない殺し屋を演じた川島潤哉は実に淡々と冷徹なのにそこに芽生えた恋心への戸惑いという造型が見事。両親を殺された男を演じた堀靖明は巻き込まれツッコミ続けるという感じなのに終幕近く、切ない背景が見えてきて感じる深み。殺し屋のボスを演じた後藤飛鳥は可愛らしいこと言いながら目玉くりぬくぐらいのことも平気で言う落差が楽しい。霊媒師を演じた伊達香苗はホットパンツにタンクトップの出で立ち、ちょっと勘違いしたアンニュイな造型で一度見たら忘れられない強烈なインパクト。
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