【芝居】「LIFE, LIVE ライフ、ライブ」フライングステージ
2017.11.12 19:00 [CoRich]
パートナーシップ法制をきっかけにした前二作を受けてのスピンオフ的な一本。2日までOFF OFFシアター。
ゲイの行政書士、渋谷と世田谷の同性パートナーシップ法制を機会に申し込もうと思ったが相手から別れを告げられる。勤めていた事務所から二人で独立して事務所を立ち上げる。
初めてパートナーシップに申し込もうとするカップル。異性婚であれば決めなくていいさまざまな決めごとを書式に残すのが面倒だとおもったりしても乗り越えていく。
そのうち、この行政書士の妹が家を出ることに決めるのに巻き込まれるように、ゲイであることを初めて母親に打ち明ける。
別れた元彼が相談に訪れて、別のパートナーと暮らしていて、里親として子供を迎えたいことの相談を受ける。
ゲイの息子を亡くした母親が相談に訪れ、お化け屋敷とまで呼ばれている大きな邸宅を交流の場に提供したいともちかける。
2015,2016年公演のスピンオフですが、わたしは2016年公演だけを拝見しています。台詞に出てくるゲイの行政書士を語り部にして、LGBTをめぐり、少なくとも本人たちにとっては大きな問題を短い物語として描きます。
一つ目はこの三部作をつらぬく同性パートナーシップ申請をするカップルが経験することで、異性間の結婚はただ書類一枚だけなのにいろいろな決めごとを書類にすることのある種の煩雑さ。二人の関係を明文化するということで考え直し見えてくることもあるし、同性パートナーシップが社会的に認められたという進歩だけれど、その煩雑さはそれがまだマイノリティであることの裏返しだという、自分たちの社会的な立ち位置を語っているよう。
二つ目は家族への同性愛者であることのカミングアウト。ゲイの法律家といえば漫画「きのう何食べた」(公式サイト,まさに無料公開の第8話がそんな感じですが)がわりと知られている物語で劇中でも語られます。親や兄弟に知らせること、それによる戸惑いや距離感、あるいは親の面倒をどう見ていくかをめぐるちょっとした駆け引き。別の物語として語られる、死んだゲイの息子を巡る母親のことも含め、家族とのいう周囲との関係を描きます。 それは、ひっかかることそれぞれが年齢を重ねてきた作家がおそらくは見てきたさまざまのリアリティを持つ深みなのです。
三つ目はゲイのカップルが里子を迎えるという物語。リプロダクティブという意味を持ちづらい同性愛者の間と次の世代をどう繋げていくかについての、一つの形。それは芝居全体に対してもあるいは社会に対しても未来を感じさせるのです。
ゲイの行政書士を演じた石坂純は語り部も兼ねつつ、ちょっと困った感じの巻き込まれ感もやけに可愛らしい。その母親を演じた石関準は安定の女性の造型。ごく抑えた母親の姿。妹を演じた高木充子が顔の形まで変わると思えるほど大声で怒鳴るのもめずらしく印象的、さらに二役を演じた役所の職員はコメディエンヌぶりが楽しい。コンビを組む司法書士の女性を演じたモイラの正体不明感、しかも一貫して美人キャラでちょっと凄い。作家を兼ねる関根信一は、おばちゃんなキャラクタも謎めいたマダムも自在に安定。
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