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2017.10.20

【芝居】「哀しい夢すら、忘れてしまう」sleepwalk

2017.10.9 19:30 [CoRich]

上野友之の演劇休止前最後の一本。 10日までAPOCシアター。80分。

小説家志望の作家は友人の編集者に持ち込むがなかなか採用されない。ライターの仕事を紹介され若い実業家にインタビューするが、秘書をするその妻への取材を重ねるうちに恋仲になる。進展のないまま、夫婦は海外へ移住し自然消滅したが、夫婦は妻の病気で帰国して男と再会、夫婦が別れることを知る。
男は小説化として売れていて原作の舞台化が進んでいる。不倫に揺れた若い女優を主演に推すが、それは編集者がかつて教育実習での教え子だった。

トレンディドラマっぽい、と云われることも多い作家。いくつかの点描が交錯して人々がつながるのは毎度のことながら見事で、巧いのです。表だっては云えない男女の関係、あるいは売れないアイドルとしての日々やうまく行かない教育実習、友達の少なそうな生徒が教室とは別のサイドバンドとしてのコミュニティ。年月を経て久しぶりに会えば、恋心は冷めていたり、高校生は成長していたり、教育実習の先生は編集者として違う立場で向き合っていたり。コンパクトにまとめられた一本だけれど、時間が流れ変化したり成長したりしているひとびとをぎゅっと濃密に俯瞰してながめるような楽しさ。

正直にいえば、たとえば高校の同級生の男、編集者を辞めて書店を開いた男、あるいはアイドルのマネージャーなど魅力的な人物が他にもいるのに少しばかり物語の厚みに差があるのは惜しいところ。男性二人に関して云えばこれもまた時間の積み重ねによる変化を描いているのです。

作家の戯曲の癖なのか、モテる割に巧くいかない男というのを描くのが多い気がするけれど、終盤では編集者と作家、それが人から見抜かれ指摘されることで、やんわり近づいていた関係を再確認し、挙動不審に照れたりしつつ、この二人で進んで行く感じは幸福感に満ちあふれるのです。

アイドルの同級生を見に行くために、女子高生と教育実習生がライブに行き、終演後にあって感激しまくり盛り上がるシーンの女子たちのわちゃわちゃした感じ、とりわけ教育実習生が感激しすぎて一番ダメな感じに盛り上がっているのが微笑ましく、楽しい描写で嬉しくなっちゃうアタシなのです。

作家を演じた倉田大輔は責任取りたくない感の面白さ、あるいは恋仲を指摘されての挙動不審がちょっといい。その相手、編集者を演じたぎぃ子はくりくりと動く眼が可愛らしく、コミカルが微笑ましい。不倫関係になりかけだった女を演じた佐藤蕗子は実に色っぽく、魅惑させる説得力。

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