【芝居】「ベチャロンドン」くによし組
2017.10.21 14:00 [CoRich]
劇場が変更になって、22日まで。中野あくとれ。90分。
島に現れた巨大生物により、隣村が恵まれた避難所生活になっていると噂になっているが、この村の農作物は風評被害でまったく売れなくて、こちらにもその巨大生物が現れないかと思っている。
その家には鬱病をわずらった従兄弟が居候していて、その家の女は恋心を抱いているが伝わらないうえ、飼っているインコを人間だと思いこんでる。
別の女は本土から遊びに来た恋人に盛り上がっているが、ほかの女に目移りしているようで、巨大生物に襲われればかわいそうなワタシになれると思っている。男はさらに別の女にお笑いの相方にならないか誘っている。
農作物で生計を立てている島で舞台には姿を見せない巨大生物に翻弄される人々を描きます。どちらかというと視点は女性側にあって、この土地が大好きというわけでもなく、かといって飛び出すこともなく、日々を暮らすのが精一杯でその土地に仕方なくいる女たち。東京からやってきた逗留する小説家やらちょっといけてそうな旅の男への儚い恋心がそれぞれにあったり、あるいはインコを人間の友達に見えていたり、巨大生物に襲われたいという願望もまたこの日常からの脱出、ということなのかもしれません。
この場所の息苦しさを思わせる描写は何カ所もあって、島でマンガを描くことすら特別なことで笑われるし、ほかの人々がこうしたいといえば逆らえない同調圧力の強さも描かれます。
書き連ねてみると少々病的にも思えてくるけれど、脱出できない場所で繰り返される日常の鬱屈だし、そこから抜け出すには外的要因しかないと思いこんでいる女たち、もしかしたらそれは作家自身が体験しているかどうかは別にしても、そう見えている現実の一断面という点で切実なものなのです。巨大生物やインコなど描かれていることは少々ぶっ飛んでSF的ではあるのだけれど、そういうことすらも変化をもたらしてくれるかもしれない外的要因、という気持ちなのかもしれません。
とはいえ、突拍子もないこと含めて全体にはコミカルなタッチで、気楽にみられます。菊池美里は安心感すら感じさせます。手塚けだまの突き抜けたテンション、お笑いの相方に気に入られちゃう説得力。
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