【芝居】「万!万!歳!」studio salt
2017.8.26 18:00 [CoRich]
スタジオソルトによる4ヶ月に渡る、若者向けの芝居塾を経ての公演。 27日まで神奈川県立青少年センター・ホール。80分。
老人たちの介護施設の集会室。昼の作業や歌、おやつの時間。新人でやってきた若い男は介護士の学校に通うが望んだものではなくこの仕事も不満だ。静かだったり突然大声をあげたりする老人たち。 ふと気がつくと車いすや昏睡状態だった老人たちは立ち上がり、踊ったり歌ったりしている。
大きなテーブルが二つ、車いすなどに座り作業をしたり話をしたりする人々。ことさらにメイクをするわけではないけれど、若い役者たちが介護を必要とするほどの高齢者を演じます。序盤では介護施設の日常の風景。ゆったりと穏やかに流れているようでいて突然激高したり、認知症ゆえに太平洋戦争で日本が負けたことを忘れて負けるはずがないといったり、あるいはちり紙と呼ティッシュに執着してみたりと、小さな混乱というか嵐はそこかしこで起きていて、でもそれは彼らにとっては日常で大きな騒ぎにはならなくて。
そこにやってきた介護士の学校で学ぶ新人のヘルパー。志があるわけではなく、他に仕事がなく不本意で選んだ仕事という内面を吐露する最初のナンバー。彼の気持ちがどうであれ、介護施設の日々は変わらないのです。 中盤ではその新人が居眠りした中で広がる世界。夢と明確に語られるわけではなくて。高齢者たちのみならず昏睡状態の人々まで車いすから立ち上がるばかりではなく元気よくしゃべり、跳ね回るのです。そこで語られるのは、普段は喋れないものが要求してたことだったりもするけれど、それはやがて彼らの記憶が飛び出すように広がるのです。それは 兵士の出征、戦時に作られた童謡「汽車ぽっぽ」の歌が戦後には改変されていること、あるいは空襲に逃げまどうことなどが描かれる中盤。作家自身の戦争に対するバイアスを感じないわけではないけれど、高齢者のまだらな記憶の中では強く印象を残した高いコントラストばかりが残る、というヘルパーの経験を耳にしたりすると、 実はそれがリアルなのかも知れないなとも思い直すのです。 足踏みならしたたみ込むように演じられるこの中盤のシーン、王者館や維新派のような、めくるめく、夢のようなどこかサイケデリックすら感じてしまうアタシです。
若い役者が高齢者を演じメイクや声をことさらに年寄りっぽくしなかったことで若者と高齢者が地続きで高齢者にも当たり前だけれど若い頃があることが強いコントラストを持って印象づけられます。とりわけ、中盤のシーンは足を踏みならし手をたたいてアップテンポなリズムが続き、さらに若い役者がまぶしく輝くのです。
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