【芝居】「お祭りやってるらしいよ」あひるなんちゃら
2017.9.3 18:00 [CoRich]
4日まで駅前劇場。75分。いつものようにライブ音源販売(fringe)もうれしい。
おまつりやってるらしいよ、とわくわくする気持ちを抑えられない女。
その恋人は喧嘩したばかりでもあってあまり気乗りしていない。
ずっと人の家に居座る男のゲームはなかなか進まない。ゲームが巧い知らない友達まで呼んでくる。 家主は迷惑だと思ってる。
引きこもりの妹がつくったお祭りの偽チラシを印刷してポスティングした姉。兄は叱りたいし、ポスティングした各部屋に謝りに行かなきゃと焦る。
おみこしを作りたくて参考に写真を撮りたいが祭りには行きたくない女とその友人の女。お祭りに行きたい浴衣の女が一緒に行くだれかを探しに訪れる。
シンプルに上質に作り込まれた部屋を思わせる舞台。共同住宅の各部屋をめぐる物語なので、それぞれの部屋の家具を入れ替えながらすすみます。思いの外入れ替えるものは多いけれど意外なほどスムーズで。
偽チラシ故に本当は開催されていないお祭りを、やってるらしいよと大喜びする浴衣の女と、その修復に奔走する男。それぞれの部屋の点描でありながら、この二人が圧倒的な熱量で全体を縫い合わせます。
恋人の二人の喧嘩した微妙な空気感と楽しそうなことの空回り感であったり、かえってほしい他人が長い間居座る居心地の悪さ、あるいは作ってしまった偽チラシを良かれと思って配り罪悪感を持たない姉と巻き込まれる兄。そして御輿をつくりたい女と友達のちぐはぐな会話。それぞれのスケッチはそれぞれおかしいところがあるあひる節だけれど、それが「お祭りやってる【らしい】」という雰囲気で貫かれていて、小さなしかしそれぞれの生活が見え隠れして微笑ましく、しかも濃密なのです。
偽チラシの姉妹と兄のシーンがとても好きなアタシです世の中に対してどう向き合うかが違いすぎる違和感、だからといって離れられない肉親の関係というのが濃密な会話を生み出すのです。あるいは恋人の二人のラストシーン。実は無いらしいお祭りだけれど、男は他のどこかでやっているお祭りを探して、今度行こうと提案するすてきな空間。いい話で終わらせず、モンスターを発現するラストもしんみりさせずに巧い。
浴衣の女を演じた宮本奈津美は、くるくると変わる表情、ころころとしたかわいらしい声なのだけれど、喜びが最大に達するとまさに「モンスター」のように豹変するのが楽しい。謝って回る男を演じた堀靖明、おなじみキレキャラだけれど、巻き込まれる側ゆえの悲哀が時々にじむのもいい。なにより、説明のために生み出した架空のOLさんの話をどんどん肉付けしていくうちに、それが現実かのように考えてしまうのが実に巧く楽しい。
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