【芝居】「振って、振られて」光の領地
2017.9.23 10:00 [CoRich]
まつもと演劇祭に大阪からビジター枠で参加。 池上邸蔵。60分。ワタシは初見の劇団です。
憲法の修正に職を賭けて反対していた憲法学の大学教授の女性の研究室。三回目の憲法「改正」の国民投票の夜。基本的人権条項の大幅な縮小が決まる。国外に出ようと考え荷物を整理していて、助手の男が手伝っている。同じ大学の憲法学の教授の男が現れる。心から修正を喜び、来期からの卒業式や入学式に向けて日の丸を振ってほしいと頭を下げて頼む。
戯曲塾で題材として出され12年前から書き始めて手直しを続けてきた戯曲だといいます。思えば社会情勢の方がすっかりこの戯曲に近づいているような感じでもあります。憲法を国民の権利を制限する方向に順を追って何度かのステップを経て変えていくという「手口」で国民が賛意を示していくようになる、というのは昨今の世の中の雰囲気を予言していたのかと思うほどに「ありそう」な話になっています。
憲法を堅持することがよいと考える女性の大学教授、と若い助手。ここを捨てて招聘された先で研究を続けたいと考えるのは半ば絶望の現れ。一方でまだ一人前になっているとはいえず行き先を見つけられない助手もまた絶望の気持ち。
物語を転がすのは、タヌキおやじよろしく、慇懃無礼という言葉がぴったりなねちっこさで現れる大学教授。人なつっこく、人がよさそうに見えるけれど、 たとえば、日の丸は最初の修正の時点で買っていたけど、完全に優勢になるまではそれを秘めていた、という慎重というか臆病さが見え隠れし、優勢となった端々に高圧的な物言いに。心から憲法の変更を望むという意味で、実にまっすぐで曇りがないように見えるけれど、助手を人事でからめ取ろうという寝技の鋭さ。いろいろな顔を垣間見せて、憲法という問題ではなくても、どこにでも居そうな実に人間臭い人物を描き出すのです。演じた宮村信吾が実に良くて、気の弱さと強気の絶妙なバランスとスイッチの瞬間が魅力的なのです。
長野県の出身だという作家は物語のなかに県歌「信濃の国」を日の丸の手旗踊りで歌っていたので、旗を振るのは巧いけれど今は振らない、という話題を交えたりして客席が大変に盛り上がったりもして。
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