【芝居】「きゃんと、すたんどみー、なう。」青年団若手自主企画 伊藤企画
2019.9.17 18:00 [CoRich]
115分。24日まで春風舎。
結婚していた次女が実家からの引っ越しを決めてその当日。母はすでに亡くなっていて「知恵遅れ」の長女と三女がこの家に残ることになる。 引っ越しを知らなかった長女が暴れたり、夫の荷造りがされていないため引っ越しの作業はかなり遅れている。 長女は次女の結婚を知り、自分も結婚して家を出ると言い張る。近所にすむ仲の良い通所者の男を呼び、家を出ようとする。
三人の姉妹と次女の夫が暮らす実家、そこから出て行くことにした次女夫婦。残される不安の妹、おそらくはちゃんと判らないけれど、出て行きたいという強い衝動を持つ長女。暮らせてはいるけれど、将来に対するそれぞれの不安から形が変わろうとしている家族の姿。 終幕近くで三人の姉妹が集う場所で鳴り続ける電話のシーンは、まさに「三人姉妹」の雰囲気。
が、物語の核はずいぶん異なります。 「知恵遅れ」の長女をどうしていくか。今までは三人の姉妹も次女の夫も居たけれど、夫婦がでていくことで三女に芽生える不安。長女はそれを感じ取ったのか、唐突に仲良しと結婚して出て行くと言い出すのです。好きだから二人で居たい、だから出て行くという衝動は劇中の台詞にあるように「純粋」だけれど、それが可能とはいえない二人の現実。呼ばれた通所者の男もまた、好きの気持ちを持っていて、そうしたいと試みるけれど、母親にそれは許されないと繰り返し言い聞かせられてきたというのもまた、男女の現実。もっとも男の側のそれはリミットの引き方の問題で必ずしも「知恵遅れ」だからとも言い切れないとも思うアタシです。
友人は映画「真白の恋」を連想したといいます。なるほど、それでも生きてるし、感情は生まれるし、現実はなかなかそうも行かないし。
三女が残される不安。次女の夫が元の恋人だったという背景、出て行くのは私だったかもしれないという奥行き。ラスト前、母親の亡霊にみえたそれは、次女の夫が飼っていたアメーバ(異次元なものを紛れ込ませるのも巧い)だというのもちょっとおもしろい。長女がこうだとわかっているのに、妹たちを産んだのは面倒をみさせる為かどうかと問いただすと、母親は生きたいように生きていってほしいということ。そこに未来の希望が見え隠れするのです。
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