【芝居】「きょうのうきよは」ムシラセ
2017.8.20 18:00 [CoRich]
ムシラセの保坂萌が女優・青木絵璃をフィーチャーして上演を続けるシリーズ企画の三回目。 60分。22日まで新宿眼科画廊。おまけ演劇20分。
結婚式を控えた女のウエディングドレスに「祝ってやる」という落書きがされる。気味が悪いがその犯人は、亡くなったばかりの祖母と名乗る若い女だった。何度も死なずに生き返って何百年も過ごしているのだという。祖父とは違う男のことがずっと好きだった。相手の男は死んだら生まれ変わるを繰り返している。いっぽう、祖母のことをずっと好きだと追い回していた男もまた生き返りを繰り返して、それによって母が生まれ、孫が生まれたのだった。
不死身というか死んではすぐ若くなって生き返り記憶が積み重なるのは祖母だけで、それ以外の人々は死んだら生まれ変わり記憶がリセットされるけれど、一人だけ思い続け生まれ変わっては祖母に言い寄るということを繰り返してきた男。祖母はそれをつれなくフって他の男にうつつを抜かすけれど、本当に好きなのは、ということを描く短編。不死身とか生まれ変わりとかSF要素はあるけれど、人が人を好きである想いが続くことをシンプルに描きます。
人を思い続けて何百年の男女、好きだといわれ続けているから油断して、だけれど他の女のものになると思うと自分の気持ちに気づいてというかわいらしさ。その何百年もの間転生しつつ言い寄ってきた男があっさりと思いを切り替えた相手である花嫁、が花嫁には浮気相手がいるといういえない秘密があって。 この物語の幹に加えて、父母は今はそっけない二人だけれど実はラブラブな男女だったことであったり、あるいはウエディングプランナーはこんな職業なのに好きな相手に想いを伝えられないままに悶々としたり。そう多くはない人数なのにそこかしこに恋愛が渦巻いていて、ふんわりとした気持ちに包まれるようなのです。
父母を屈託なく好きだといえるのは、両親に愛されてきたからじゃん、という軽くはなされる台詞が実にいいのです。
ラストシーン、転生してきた男が、押しつづけてすっと引くことで祖母の思いを引き寄せたことをぽろりと漏らし、実は祖母への想いの記憶がちゃんとあることが示されます。この夫婦、互いに秘密を抱えたまま生きていくのかなぁと思ったりもしますし、それはもう一度転生すれば生き返って待ってくれているはずの祖母に再会できることを信じて疑わないからか。
祖母を演じた青木絵璃、27歳なのに年寄り、怪優という存在感すら感じさせます。ウエディングプランナーを演じた渡辺実希は大きな眼が印象的。叔母を演じた保坂萌との友達感もいい。 おまけ芝居は、芝居の前日譚となる話。この祖母が恋いこがれた相手を捜すためにバイト先のTSUTAYAの店長と話をするという小さな会話。バイトなのに店長に対していちいち偉そうだったり、あれこれ押しつけてみたりと、相手への好意を持っていることがひねくれて出てくる感じがかわいらしいし、巻き込まれ困り果てときに軽く切れたりする店長を演じた関村俊介の大人な怒りがリアル。
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