【芝居】「15 Minutes Made Anniversary」Mrs.fictions
2017.8.26 11:00 [CoRich]
10周年を迎えたMrs.fictionsの人気ショーケース公演はなかなか豪華なラインナップ。8月27日まで吉祥寺シアター。120分。週末午前中の追加公演になんとか潜り込みました。開演にまにあわず、最初の一本はロビー映像にて。(もうすこし解像度ほしかった)
ドイツ帝国、第一次世界大戦の頃の優秀な将校だが、うだつの上がらない男の面倒をみることになる。赴くことになった戦地にも連れて行くことになる。勝ち目のない作戦は失敗し敗退するが隠蔽を謀る上層部はその理由を押しつける兵士を選ぶ。
「フランダースの負け犬」(柿食う客, 作演出・中屋敷法仁)
中学から高校に進級した生徒たち。同じ学校だけれど、昼間の普通部に加えて同じ教室では夜の定時制の授業が行われている。家庭の事情で働いていたり、普通の学校に通えない、役者を目指し昼はレッスンに通っていたりする。「ハルマチスミレ」(吉祥寺シアター演劇部, 作演出・中屋敷法仁)
恋をした女はケーキ屋の男に恋をして告白しようとするが、同じ職場の女に言い寄られている事を知り言い出せない。痩せなくっちゃ。
「BBW」(梅棒, 作演出・伊藤今人/遠山晶司)
子供を預けて初めての夫婦での旅行。3歳の娘に動画メッセージを送る。残り時間は15分。
「ラスト・フィフティーン・ミニッツ」(キャラメルボックス, 作演出/成井豊)
ジャージ姿で不慣れな原宿にやってきた体育大の女三人、お洒落な男三人組やスナップを撮る男女に声をかけられる。地元に住む老人は騒がしい原宿が不満でならない。おっぱいの上にジェンガを載せそれが崩れると一体が焼け野原になるのだという。みんなの想いを合わせればそれは解決するんじゃないか。
「想いをひとつに」(地蔵中毒, 作演出・大谷 皿屋敷)
Q太郎が亡くなった。両親と恋人のU子がそれを看取る。何年か経ち弟夫婦に子供ができていろいろなことが上書きされていても、恋人はずっと家を訪れる。両親も年老いて介護が見え隠れするようになってもなお。
「私があなたを好きなのは、生きてることが理由じゃないし」(Mrs.fictions, 作演出・中嶋康太
「フランダースの負け犬」、 去年までのフルサイズでの上演は未見。たった4人の座組にぎゅっと圧縮して女優のみで上演。独特のスピード感ある節回しなどちょっと懐かしい気すらする柿喰う節。男二人の間の濃い友情、決して優秀とは言い難い友人にどうにも惹かれる気持ちと、無理筋だとわかっていることでも突き進みそれが失敗だとしてもそれをどう隠し責任をとらずにするか。つい最近NHKで「インパール作戦」の番組を観たばかりだからか、不思議な相似を感じるアタシです。優秀な将校を演じた深谷由梨香の節回しが久々で懐かしく感じて楽しい。
「ハルマチスミレ」は、 大縄跳びのリズムで跳ね回りながらの日常の風景。同じ高校だけれど定時制という別の時間で生きている同い年の生徒たち。ゆるやかにつながっているけれど、プラスもマイナスも何かの理由があって定時制を選んだ人々がいるということ。高校生にリズムとなると、どこか「わが星」風な感じはどうしてもしちゃうけれど、リズムや音楽が絶妙にポップでかっこいいし縄跳びのアイディアも何かのコミュニティを体現しているようで巧い。
「BBW」は、 ぽっちゃりを表すBig Beautiful Womanとか、なるほど。やけに風俗ばっかり検索にかかっちゃうのは痛し痒しだけれど。J-POPかけまくりでスピーディでキレキレのダンス。ごくシンプルな等恋物語をコミカルに、しかしこれだけのクオリティで作り込まれると、パフォーマンスでで引き込まれ思わず応援して感動してしまうような魅力にあふれているのはなかなか希有。15分でもこの熱量。見逃し続けている本公演を観たくなるような、ショーケースにふさわしい仕上がりなのです。そのヒロインを演じた原田康正が実に魅力的に可愛らしいし、応援団長を演じた伊藤今人が男気溢れる感じでちょっとダサくてカッコイイ。
「ラスト〜」は 王道SF風味。15分の中では人が人を想う気持ちを語るために絶望的な市の直前の時間で走馬燈のようにかけめぐる想い、動画というのが今っぽい。正直に云えば、その破滅に向かって一直線で想いの昇華はあっても救われないわけでキャラメルっぽくない気もするけれど、SF映画のワンシーンという感じにはなっているのです。
「想いをひとつに」は、 がっつりシュールなナンセンス系。やけに人が多いかんじがしたりするのも含めて初期の大人計画やナイロン100℃、あるいは猫ニャーを思い浮かべるアタシです。最近見かけないタイプという気がするのはアタシのアンテナが鈍っているからか。理不尽に据えられたジェンガを崩さず原宿を救うための解決策がぼんやり「皆の思いを一つにする」というのもどこかイマドキというセンスを感じさせます。
「私があなたを〜」は、 Mrs.fictionsが得意な長い時間の流れの中での素敵なラブストーリー仕立て。死んだ後の男を思い続ける婚約者。長い時間の中で男の両親も歳を取り弟には子供も生まれてて変わっていく現実と、変わらずそこに居続ける女の想いの対比が見事な小品。15分の中で圧縮してみせるための早送りのために指を鳴らしてシーンを進めたり、第四の壁を軽々越えて客をいじる掟破りがスマートでかっこいい。Q太郎、O次郎、U子という名前の登場人物を説明なく入れているのもセンスがいいのです。まあ、死んでお化けだからかと考えちゃうとアレですが。軽い語り口の岡野康弘がとてもいい。
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