【芝居】「奇想の前提」鵺的
2017.7.22 14:30 [CoRich]
江戸川乱歩のパノラマ島綺譚(青空文庫)の後日譚を濃密に描く115分。30日までテアトルBONBON。
猟奇的なパノラマ島の事件が起きてからすぐ、島は閉鎖され管理人だけが住む島になっていた。花火の中降り注いだ狂気の血を受け付いだ菰田家の三人の娘が産んだ子供たちはその島に興味を持ち何度か忍び込んでいるが、やがて親からは引き離され遠く東京で暮らしている。
島を維持していた親戚筋の東小路家も年月が経ちその費用が問題となり、島を開放し観光施設としたいと申し入れる。その許諾のために菰田家の人々は東京に住む子供たちも含めて呼ばれる。
江戸川乱歩にそう親しんだわけではないアタシですが、 江戸川乱歩の描いた世界のその後。 後追いで「パノラマ島奇譚」を読んでみれば、そこで作られた少々グロテスクで美しい世界で、それを引き継いだ世界観と、その物語に世代を超えて囚われた人々を描く物語。 廃墟と化してもなおこの島に魅せられている人々の狂気。
三人姉妹、ほぼ巫女のように生娘のまま歳を重ねた長女、二人の子供を産みながら一人この家を凛として切り盛りしてきた次女、今なお恋多き三女など決して幸せな状況ではなく。その子供たちもまた島に魅せられ、あるいは離れがたい状況でもあって。後半に至りさらに執事や管理人といった人々の関係は幾重にも隠されていることが露わになるのです。
更には沈むしまからの大脱出、スペクタクルをきっちり、確かに少年がワクワクするような活劇調という雰囲気でもあります。
福永まりか、印象的なサイコパスを完璧といっていいほど強く印象づけて巧い。半面、アタシがみている芝居の範囲ではわりと同じような役を当てられがちで、結局のところどれを観ても同じになりがちなのが心配と言えば心配というのはよけいなお世話。 木下祐子は三人姉妹で家を背負う次女、きりりと美しく、少々キツいキャラクタにも説得力があります。 佐藤誓は年齢を重ねた故の説得力なのだけれど後半で暴かれる秘密のゲスな雰囲気もきちんと細やかに描きます。 中山朋文は島の管理人というちょっとサバイバルできそうな雰囲気はたとえば体型かもしれないけれど説得力があって、しかも秘めた狂気が静かゆえに印象的。 中村暢明は暗躍するスパイというような雰囲気。アタシが観た序盤ですでに声がちょいとばかりハスキーなのはちょっと残念。
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