【ミュージカル】「日本国 横浜 お浜様」もじゃもじゃ頭とへらへら眼鏡
2017.8.12 14:00 [CoRich]
神奈川県の文化事業として行われる「地劇ミュージカル」の上演に向け1月のコンペで優勝し 5月のレビューショーを経て、全ナンバーをオリジナル曲での上演。2015年の「ウキヨホテル」のナンバーも嬉しい120分。 13日まで神奈川県立青少年センター。上演後には日替わりゲストを交えたトークやレビューショーあり。
高校演劇部が文化祭上演に向けて選んだのはOGが横浜・チャブ屋の娼婦・お浜を描いた戯曲だった。教師や親たちもその上演に難色を示す。戯曲は未完で客の男に恋をした女が絶望のうちに命を絶ってしまうところで止まっている。現役の後輩たちは、この戯曲を完成させ文化祭での上演を目指すが、主役となる女子高生の売春が発覚し、その夢は叶わない。
演劇部の高校生たちが地元横浜・本牧にかつてあった売春宿(あいまい宿)を描いた戯曲に惚れ込み、それを阻む大人たちや運動部との対立の中での成長を描きます。 女たちからの視点での売春が物語の核になっています。状況の中で女たち(もしかしたら致し方なくではあっても)が受け入れ、自力で生きていくための手段であったことをかつての時代のこととしてだけではなく、現代の高校生や貧困、ネグレクトの問題にきちんと繋げます。時代は変わって女性の自立は少しは進んだかもしれないけれど、決して売春の問題が解決したわけではない、ということを、しかし単に悲惨さではなく、力強く生きる女たちの物語として、あるいは成長する少女たちの一つの側面として描くのです。それは作家が女性であることとは無関係ではないと思うのです。
ミュージカルらしく、かつての歓楽街を背景にすることで華やかなダンスナンバーも数多くて、ステージとしての楽しさも盛りだくさんなのです。顧問教師や保護者たちは上演を阻むヒールとして描かれますが、教師の側の、生徒の生活のなにもかもは背負いきれない、というナンバーなど現在の教育の現場の人々への目配りもきちんと忘れないのです。
チャブ屋で客への恋心に破れ絶望するところでとぎれていたOGの戯曲。女は耐えるものだという時代を象徴するよう。男を殴って胸を張って生きる覚悟を決めるという凛々しさが美しい。それに相似形になるように、売春によって退学を余儀なくされた少女もまた、自立し生きていくことを選び取った希望がうれしいのです。
チャブ屋のオーナーの孫を演じた田中惇之は、ともかく格好良くて魅力的で男のアタシですら惚れてしまうほどに魅力的。ステージごとに異なるゲストによって演じられる生活指導の教師を演じた武藤寛、なるほど元四季というだけの圧倒的な力は、終演後のトークショーでの一曲も贅沢にうれしい。 全ナンバーオリジナルのおかげですべての歌詞が当日パンフに載っているのが地味にうれしいアタシです。
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