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2017.08.14

【芝居】「ワンマン・ショー」やっせそ企画

2017.8.6 14:00 [CoRich]

カムヰヤッセンの役者数名による発信企画と銘打つ公演。岸田國士戯曲賞受賞(2004年選評)という本作、ワタシは初見です。 6日まで、雑遊。120分。

懸賞マニアの男。求められていないことまでハガキに書いて応募しつづけているが、自分のことだけでなく周囲の人々、はては人物をねつ造してまで送っている。妻と暮らしている。ハガキを出すように云われているが実は段ボールに溜め込んでいる。時折無職の兄が金の無心にやってきているが、妻は密かにハガキを捨てるように依頼する。
兄は自治体の女から仕事を斡旋されるが、その依頼者の女は自分について訪ねてくる男にしらないと云って欲しいというものだが、その男が現れないままなんども会う。 男は航空写真を撮り土地や建物の変化を見つける仕事。密かに建て増しした家を訪ねると家主の妻とその義弟が居るが、家主は姿を現さない。 隣の家に越してきた男は庭の池が広がっていると訴える。

序盤はたとえばよだれを垂らし続ける妻という「描写」ひとつとっても私たちの世界とは少し違うところに住んでいる人々の話という印象で始まり、中盤で懸賞マニアが応募葉書の為にねつ造した人物たちが存在する不穏さ、あるいはその人々が懸賞マニアのの周囲の人々と相似形をなしていていくのが見えててくる後半。 

男の描いた妄想の物語、という括り方をするのが適切かわからないけれど、懸賞マニアの男、妻、無職の弟、自治体の女、密かに増築される家とその家族と不在の家主、隣の家の男女をめぐり、謎めいた仕事やら、捨てた葉書が戻ってきたりと、ぐるぐると再帰的な合わせ鏡、あるいは裏表がいつの間にかひっくり返るメビウスの輪のようで、正直に云えば観たらすぐ物語が腑に落ちる、という感じではありません。デビッドリンチよろしく、ディテールはやけに細かいのに物語はわからないところも多く、しかしちゃんとぐいぐいと引き込んでいく強度のある物語、というのはまあ戯曲賞取ってるぐらいですから当然か。

初めて観た戯曲ですが、丁寧に紡ぎ上げた印象。「箱の中から飛び出す人々」は役者自身が飛び出してきたという感想をネットで散見しますが、今作においては箱からは紙吹雪という感じで、抽象度が増した分、ちょっとわかりにくくなったのではないかと邪推します。

懸賞マニアの男を演じた青木友哉、観客の視座かと思えばこの人物こそがトリッキーという絶妙のバランス。隣に住み不可解な仕事を手配する女を演じた工藤さやは抜群に色っぽく謎めいた人物を好演。行政の担当者イエローさんを演じた、ししどともこは明るくハキハキの中に内包するダークな雰囲気。無職の男を演じた根津茂尚は実際のところ最もマトモな登場人物で、ちょっと巻き込まれている感じがよく雰囲気にあっています。

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