【芝居】「グロッキィ・マリー」ボタタナエラー
2017.8.11 19:30 [CoRich]
明石スタジオ。13日まで。70分。
アルコール依存症の治療施設。新たに入ってきた男は床が地雷原に見えておびえ、ミーティングでは互いに挨拶をして自分の経験を語り、断酒に挫折すれば懲罰部屋に入れられたりもする。出所間近になると社会で酒を勧められる機会をシミュレーションすることになっている。
吾妻ひでおの「失踪日記」を思わせる施設を舞台に。実際のところ、アルコール依存症そのものを描くというよりは、それはあくまで物語のきっかけであり枠組み。そのこと自体の深刻さを描くわけではなく、弱い心を共有しつつその弱い心とどう付き合うか、あるいは知らんふりをするか、という点描に作家の関心が向いているように思います。
アルコール依存の経験は今のところないけれど、「失踪日記」シリーズのおかげで、なんとなく雰囲気はつかめるシーンがいくつか。ミーティングで互いに声を掛け合い、自分を語りあうとか、懲罰部屋とか。アルコールの誘惑に弱いという共通の弱点をもつ人々の失敗する瞬間をコミカルに描きます。人それぞれの背景を描き込んだりはせず、執拗にその情けなさだけを描くことで、芝居というよりはコントな印象を受けるけれど、どこまでも温かいというか優しい作家の視線が見え隠れするのです。
一方で、社会は飲酒のきっかけに溢れているというシミュレーションの後半。周囲が演じる必要があるわけで、どちらかというと芝居だから作られたシーンという印象があります。これもまた、各々の人物の背景がどうか、ということには立ち入らず、ひたすらに「ダメだとわかっていても飲んでしまう一瞬」を執拗に描く事という意味では前半と地続きになっているのです。もっとも、会社の歓送迎会とか葬式に集まる親戚といったあるある、な感じが多いという意味では後半の方が、ワタシの腑に落ちる感じではあります。葬式にまつわる親戚たちの話しは「東京物語」のパロディを交え、役者たちが遊んでいる感じが楽しい。
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