【芝居】「その夜と友達」範宙遊泳
2017.8.10 [CoRich]
STスポット。休憩5分を挟み120分。13日まで。
15年前の話を思い出しつつ。
大学で鍋を背負っていた男に声をかけて仲良くなった。レンタルビデオ店アルバイトの後輩とは同じアパートに住んでいて、映画の話で盛り上がりつきあい始める。鍋を背負っていた男の住む武蔵小杉の高そうなマンションで集まって遊びで映画を撮ったりしていたが、突然のカミングアウトに驚きそれ以来あっていない。
男の逮捕のニュースをみた。思い出したようにあの町のあの部屋に行ってみることにした。
2017年と、それから15年後の二つの時間軸。易々と第四の壁を越えどちらの時代から語りかけつつ、なにが起きたかを丁寧に。物語の幹となるのは、仲良くじゃれあうような中にあった三角関係というか片想いというか。鍋を背負うような真似をして「相手に見つけてもらいたい」というわりと序盤で同性愛を背骨に持つ話だということには感づくのだけれど、それが中盤でがっつり女装までしてカミングアウトする、相手の男は異性愛者で理解は示しつつ、同性愛のベクトルが自分に向くことに対しては受容できないという絶望感。後半ではあるいは15年を経て逮捕されたのが報道では「男性器の形をした花を子供に配っていた」なのに実際には「レインボーカラーの花を配る同性愛者」というだけで逮捕されているという、社会が不寛容に進んでしまった15年の月日、ある種のディストピアだけれど、15年を経てこの男二人の間は少しばかり距離が近づいたというわずかな希望。この軸でみると遊びで作った映画で、同性愛の男が「怪物」という役でカップルを襲うという不寛容極まりない残酷さに気づくのです。
「鍋男」を演じた大橋一輝、柔らかさと強い視線が印象的。語り手を兼ねるもう一人の男を演じた武谷公雄は軽い語り口が自分に向けられた愛情への無自覚に良くフィット。女を演じた名児那ゆりはその二人を見つめる視点のよう。
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