【芝居】「Nostalgia~あなたがいないあの場所で~」ネオゼネレイター・プロジェクト
2017.7.21 19:30 [CoRich]
120分。23日まで劇小劇場。
爆心地の近く。ただ一つ残っている建物へ依頼され男を捜しにくる人々。もとは図書館だったらしいが爆撃で迷宮のようになったその場所にはオーナーと呼ばれる女と、オーナーが修理したAIが住んでいる。数ヶ月前にこの場所を訪れた男は地図を持ち、より奥に分け入ったと聞き、同じ道を辿ろうと考える。 男はもう一人の男と、思い出話、好きだったもののことなどをとりとめなく話している。
元々は秋頃にいったん閉館の噂もあった劇場ゆえに記憶やノスタルジーを全面に押し出した物語。脱出ポッドや宇宙飛行士、AI、あるいは爆心地といったSF風味の設定はあるものの、記憶のない女、亡妻の記憶と自分との対話で生きる男など全体にどこまでも静かに、丁寧に描きます。
決して大きな劇場ではないこの場所に、圧倒的な物量で作り込んだ美術が圧巻。本棚に囲われ、そこかしこに死角がある場所で、真っ暗な中のマグライトの光の美しいこと。 正直にいえば全体の色調がほぼ一貫して暗く、とりわけ下手側客席に座ると上手側のテーブルでの会話が見えづらいなど問題点はいくつかあります。
自分の影と会話し続ける男の向こうにみえるのは亡妻の姿、その男を追う人々もまたそれぞれの影。思い出を失った女であったり、その女を拾い上げた相棒であったり、あるいはその宇宙船の操縦士であったりという人々がゆるやかにつながる関係。要素それぞれをみれば、かなりSF風味な断片なのだけれど、それをことさらに物語として語らずそういう人々を配してゆるやかなつながりを感じさせることが物語の静かな雰囲気を作り出します。
絵描きになりたかった祖母、その意志を継いだのかどうか、世界を色づけするために(絵の具ではなく)種を蒔いてまわる、という女性の存在もなんかかっこいい。演じた芝崎知花子の軽やかに前向きな雰囲気。お茶を入れ続ける女こと亡妻を演じた松岡洋子は想われ続ける美しさに説得力。 思い出の無い女を演じた瑛蓮はひたすらかっこよく、その相棒を演じた織田裕之は人の好さが少しコミカルで楽しい。探している男を演じた渡辺克己は独特な雰囲気で存在感があります。
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