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2017.08.14

【芝居】「ハイバイ、もよおす」ハイバイ

2017.8.6 14:00 [CoRich]

ハイバイの短めの過去作品三本 (RPG演劇, 大衆演劇, ごっちん娘) を改訂上演。12日まで神奈川芸術劇場(KAAT) 大スタジオ 145分

RPGで毎晩ゲームを続けている人々。互いに何をしているかはあまり聞かない関係。新しいVRグローブの力によって仮想と現実の境が消えモンスターが現実の世界に現れる。多くのプレイヤーが犠牲になり絶望的となったとき伝説の勇者が現れる。「RPG演劇」
隠れキリシタン狩りで一人生き残った男は江戸で殺人鬼となり恐れられる。幕府より討伐を命じられた男二人、一人は殺そうとし、一人は話を聞こうと考える。「大衆演劇のニセモノ」
ごっちんは女の子。好きな男の子が居るがその子が好きな同級生の女の子について嘘をついてしまう。それを深く後悔するが、父親に責められ、自分が「こんなカラダ」で小学生の女の子である深い悲しみによって姿を獣に変えてしまう。10年が経ちあの日の告白をしようとするがごっちんが現れるも毒矢+ナイフによって殺される。その深い悲しみは同級生だった女をも獣に変える。「ごっちん娘」

祭を思わせる紅白に彩られたイントレ。三本の芝居の出演者は重なっているせいか、前説とか幕間を岩井秀人の喋りで繋ぐ構成。ハイバイの「新年工場見学会」の中で演じられた短編はそれぞれがおとそ気分でぼんやり見るカッティングエッジが楽しい感じなのだけれど、それをわりと本気で作るのは時間の長さも含めてなかなか難しいバランスという気もします。

「RPG」は出会うはずのない人と出会い(幕間の語りでその実体験を語る作家)、力を合わせて人類の危機に立ち向かうRPGが現実化するSF映画風の枠組みに、亡くなった父と母の間になった秘密がこの危機に際して明かされる、というわりと王道な要素を詰め込み放題。記号的にアイドルを演じた川面千晶の舌足らずが新鮮。学生のプレイヤーを演じた田村健太郎も記号的に爽やかで楽しい。母を演じた伊東沙保、VRグローブを手にしてからの格好良さ。

「大衆演劇」は客席に撮影を許可して、見得を切るシーンを沢山置いて盛り上げます。正直に云えば、そのキメのシャッターチャンスのようなポイントに拍子木が鳴らないのが違和感を持つアタシです。新感線のようなと思うのだけど、それは大衆演劇では鳴らないものなのかなぁ。

「ごっちん娘」幕間の語りで作家は自分の娘のいじらしさ(だったかな)がこれを書いた原動力だといいます。筋肉モリモリの男、小学生の女の子を演じるということの出落ち感はあるのだけれど、それをキッチリ物語にする圧巻。差別する側は自覚しない気遣いや区別のつもりだけれど、それが本人をどれだけ傷つけるかを執拗に描くのです。獣に変化して山に行く、という「怒りの持って行き場」がファンタジーに着地するのも哀しく、しかし上品な描き方なのです。ごっちんを演じた後藤剛範は圧倒的な肉体とやけに腰の低い雰囲気が、このキャラクタの説得力を何倍にも倍増させます。友達を演じた藤谷理子はそれと対照的に可愛らしく優しい女の子という雰囲気。それが友達というのが更に悲劇的な対比。

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