【芝居】「Y FUTAMATA」ロ字ック
2017.7.7 16:30 [CoRich]
ライブハウスでドリンク付きの公演。当日キャンセルだけど潜り込み。あ、ドリンク引き替え忘れた。7日まで近松。75分。
ストーカーしていた男のところにナイフを持ち押し入る女。ある女優の芝居を見に行ったが、遅刻した上に途中退出してしまった後に舞台に火が放たれ観客はみんな死んだのに自分だけ生き残り、その上その夜女優と話したという「丸山事件」(作・演出 青木秀樹)
飲み会の後作家の家に流れ、終電がなくなったあとに一人残った女優。
女優は作家の才能に惚れているとはいうが、作家の下心のある誘いはきっぱり断る。「演劇の夜」(作・演出 田川啓介)
芸人コンビ、一人は女と暮らし、ひとりはそういうことはない。合コンにはいってみるものの。20年後の自分たちは「僕らは小沢健二に踊らされて、ここまで」(作・演出 山田佳奈)
「丸山事件」は、1980年の新宿バス放火事件の放火と心身耗弱という状態をモチーフに、なるほど通り魔的な放火犯、その生き残った当事者。芝居を見に行った観客と名乗る女だけれど、じつはその芝居の出演者で、彼女自身が舞台に火を放ったというメタ的な構造になっていて、その芝居を観ているワタシという観客もまたそのメタに取り込まれているのが見事。病的なほどの繰り返しや、記号的ですらある「狂っている」という芝居は正直ちょっと時代を感じないことはないけれど、明確に青木節だし、ふつうにやればアウトと指摘されかねないことばかりのわりにそういう気にならない、というのは不思議な感覚です。迫力ばかりではなく、狂ったままのテンションで走りきるという体力を使い切る芝居を、一人で背負いきった小野寺ずるが見事
「演劇の〜」は才能に惚れることと恋愛の感情が交差し勘違いする物語。女優二人きりで過ごしている夜中のとろんとした雰囲気もまた、才能への愛情だけれど、それを自分自身への恋愛感情として勘違いする脚本家のすれ違い。演劇の現場に限らず、ところどころでありそうな勘違いのコミカル。そんな気はなかったと釈明するも、前のめりになった脚本家はパワハラまがいに権力をちらつかせたり、反対に女優は寝たいからキャスティングしたのか、と矜持に訴えてみたり。この先も同じ業界で仕事が続くかもしれないし、互いのフィールドではそれぞれ認められているというパワーバランスだから成立する、恋のすれ違いのコメディの仕上がりになって楽しい。このバランスがなければ単にパワハラセクハラ案件なわけだけど、それを絶妙のバランスで乗り切るのはさすがにイマドキの作家だと思わせます。
「僕らは〜」はラップ調に始まる序盤を経て、まだ売れない芸人コンビのあれこれと、その周りの人々。新人で構成されているとはいえ、役者以前に、正直にいえば物語そのもの力量が前二本に比べて歴然と分が悪く、これが最後に来るのも構成としてもったいない気がします。もっとも、「ライブハウス×演劇」というスタイルに対して、音楽推しの芝居を目指していると感じられるのはこの一本だけで、そういう意味では劇団主宰としての矜持ともいえるのです。
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