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2017.07.10

【芝居】「泥の中」VAICE(ヴァイスあかぼし)

2017.7.1 14:00 [CoRich]

95分。2日まで駅前劇場。

オジサン俳優ばかり、旗揚げの2016.3から同じ作演、女優の一人の客演も共通。

場末、食中毒を出して酒と乾き物ぐらいしか出さない酒場に集う男たち。 祭りのある今日だが昼間からほかにいく場所もなく店にただたむろし酒を飲んでいる。東京からの客も居たりするが今一つなじめない。
店主が長い間追い続けたのに避けられ続けてきた女が自分からこの店に転がり込んでから数ヶ月。二人は婚約している。女は店にも顔はだすものの、この店を畳んでほかに引っ越し二人で暮らそうとたくらんでいる。店主の妹と女は折り合いが悪い。
店を訪れた見慣れない男は手があたたかく、この店がなくなると聞き困り果てる客たちをあっという間に取り込んでしまう。店主の婚約者がすべての元凶だと客たちを煽る。

人生をかけ追い続けたのに袖にされ続け、そろそろあきらめてこの小さな酒場でシケた人生が暮れていくと覚悟したところに、唐突に舞い戻ってきた女。序盤で女がいう「ワタシは女優」、つまり生きるためにこの男に取り入り、演じ続けようという決心。こんなところまで追いかけてくる男が更に現れるぐらいにモテ続けてきた女もまた年齢を重ね、それまでは見向きもしなかった男を選ぶのもまた、重ねた人生の着地点を考えての妥協。

年齢を重ねて終い方が見えはじめた男女が選ぶこれからのことはちょっとほろ苦い。程度の差こそあれ、幸せに生きることにみな貪欲。一見ヒールで居続けるイヤな人物である女もまた、貧乏ゆえの僻み根性が原動力になっているのだという一言がうまく効いていて説得力をぐっと増すのです。

正直にいえば、追ってきた男が唐突に「手の温かさ」だけで酒場の人々をあっという間に取り込んでしまうところに違和感があるアタシです。物語が大きく動く不穏さという意味で重要な点なのに、ここの説得力が薄くてノレないのが惜しい。ここに目をつむれば、彼が女を煽り立てる理由には納得感があるのだけれど。

店主を演じた林和義のちょっとした薄笑いで見てる表情がちょっといい。後半のSMで吊されているのもコミカルで楽しく。婚約者を演じた小林さやかは年齢を重ねてもモテて勝ち続けてきたのだろうなという説得力と、その底にあるどす黒い貪欲さもまた新たな魅力。店の客を演じた有川マコト・省吾はそれぞれ、人のいい、でもちょっとスネて冴えないオジサンたちが魅力的。

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