【芝居】「かかづらふ」七味の一味
2017.7.17 11:00 [CoRich]
七味まゆみによるユニット、「七味の一味」旗揚げ公演で併演された一人芝居。ワタシはこちらだけ拝見。17日までラゾーナ川崎プラザソル。65分。
母親を殺した罪で取り調べられる女。母親は娘を厳しく育ててきた。それは人に迷惑かけないよう、人の心がわかるようにという方針だった。 母娘の二人暮らし、母親にはまだらに認知症を発症していて、最初は気丈に明るく振る舞う娘だったが、おなじことの繰り返しにうんざりする日々。いつあるかわからない同級生からの同窓会の誘いに少しこころを踊らせて、支払いの宛もないまま買ってしまった高価なブランド品を開封しないことでぎりぎりのバランスを保っている。
七味まゆ味の一人芝居というと「いきなりベッドシーン」の印象が強烈ですが、あれから10年弱、女子高生を演じていた女優は一気に老女と介護する娘、という閉塞の場を描きます。なるほどワタシも歳をとるわけです。
ネタバレかも。
まだらの認知症だから意識が明晰な時には自分にも厳しい母親はそんな自分が許せない矜恃。それゆえ起きた悲劇。苦しくてしょうがないのに救急車を呼ぶのが恥ずかしいということだったり、あるいは娘にせがんだことだったり。こういう関係を風景を描いているのはカムヰヤッセンの休止公演(1)に似ていますが、娘の側がそのストレスをどう抱え、発散していくかという苛つきを丁寧に描くのが違うようにも思うのです。
描き方、前半は娘の視点から。同じ台詞、話題を繰り返す日々はやがて疲弊といらつきとなり当然のようにぶつかる日々。後半は同じものを少し端折りながら(←見やすさという意味でこれ重要)母親の視点で描きます。それぞれの終わりごろの母親は暴れ、奔放にまるで子供のよう。いわゆる老人とは違う身のこなしではリアルとはいえないけれど、それぐらい手強くて、手がつけられず途方に暮れるという説得力を生みます。
もうすこしコンパクトな場でもきっちり濃密に作れそうで、もちろん主眼は「七味の一味」としての公演だろうけれど、名刺代わりにこういう一本があるのはとてもいいことだと思うのです。
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