【芝居】「永い接吻」天明留理子ひとり芝居
2017.6.16 19:00 [CoRich]
天明留理子が立ち上げた企画「てんらんかい」、アタシが拝見したのは工藤千夏さんによる一人芝居、 65分。18日まで、古民家ギャラリー・ゆうど
今は亡き堀部安兵衛の妻を名乗る尼姿の女、そのころの思い出を客に語って聞かせる。
訪ねてきた女、父親のプロダクションで芸人から講談師となった女の仲が不倫となり、この庵に入り浸っていたと告白し、自らはその娘だという。認知症となり家には戻れなくなったのに、この庵を訪ねていた。
2015年上演の「中山くんの縁談」をきっかけにした工藤千夏による堀部安兵衛モノ。作家が選んだのは妙海尼を思わせる女。 ワタシが観られなかった夕方公演では講談師となる女優・天明留理子が演じるのも楽しく、コンパクトな座組は旅公演にも向いていそうです。
二つ並んだ座布団、尼姿で入ってきて静かな語り口から始まり徐々に講談口調となっていく前半。「義士余談 堀部妙海尼」なるタイトルの講談の上演記録(このあたりで、堀部と検索したり)もいくつもあるようで、なるほど、ここで講談の片鱗が見え隠れする楽しさ。めいっぱい盛り上がったところで、あっさり視点がくるりと180度入れ替わり、着替えることでそれまで尼に向かい合っていた客人の女に変化します。堀部妙海尼を名乗っていた女が、客人の女の父親と不倫関係にあったというフィクションにするりとすり替えます。堀部の妻だったという嘘をついていた女、かつては信じた妻子ある男と会うこともかなわなくなり寂しく暮らす一人の老女の姿が見えてくるのです。 自宅に帰れなくなるほどの認知症にもかかわらず、この庵を久々に訪ねてきた去年の出来事は、彼女にとっては支えだし、その娘にとっては信じたくない悪夢かもしれませんが、それを冷徹に描く作家の不思議なリアリティ。
。 終幕、その老女が若く、男と仲むつまじくここに暮らしていた頃の一シーン。ただただそのときの時間が幸せだったこととの見事なコントラストをなすのです。
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