【芝居】「愛を喰らえ!!!(東京編)」ヒロシ軍
2017.6.4 15:00 [CoRich]
長崎を本拠地とする劇団、ワタシは初見です。九州のショーケースイベントで去年は最下位、今年は十年目にして優勝というイキオイで初めての東京公演。4日まで王子小劇場。75分。
共演をきっかけにつきあうようになった男女。二人とも役者で売れたい夢があるが、女はあるきっかけで売れ始めるが男は芽がでないままバイトの日々を送る「愛してる」
ずっと友達関係のままだった男女。男は先が読めないから告白が怖く、女は愛はあるのだから告白を待っていて、果たして二人はつきあうことになる。家を訪れるデートの日、女は突然の多量の出血、男の家の前で倒れる。男は嘆き悲しむが「一寸先はYummy!!Yummy!!」
女が二人待ち合わせる。紹介されたメイクアップ教室があまり良くなかったという一人、口論になるが「キレイはつくれる」
役者をあきらめテレビ局のADとバイトに明け暮れる日々の男。テレビショッピングのアシスタントの女性タレントには夢があり役者になりたいと思っているが、共演者のだめ出しもきつく、オーディションに落ち続け罵詈雑言を浴びせられて落ち込んでいる。男はなぐさめようとし、バイトの現場を見せて勇気づけようとするが、女は好きだといわれてもぜんぜんそんな気持ちにならない「まみれまみれ」
短編四本を一時間強、コントなのか演劇なのかの区別はあまり意味がないかもしれないけれど、男女の不器用な愛情がほとばしるさまを荒削りに、しかしともかく熱く語りきるのです。
今年の演劇イベントで優勝したという「愛してる」は、共演からつきあうようになった役者二人の互いの愛情、女だけが売れはじめていくギャップを抱えながら変わらない互いの恋心を全12話のワンカットを並べた、という体裁で描きます。「キムラタクヤ」という同姓同名ゆえに話しのきっかけにはなるけれど、「名前負け」といわれがちということがちょっとコミカルで、しかしほろ苦く。終幕、踏切で愛してると叫び会う男女の気恥ずかしいほどのまっすぐさ。
同じイベントの前年で上演され最下位におわったという「一寸先はYummy!!Yummy!!」もまた、男女の恋物語。永く友達だったふたり、初めてのデートの直前に二人を襲う出来事。唐突に多量の出血で倒れ、唐突に歌に台詞を載せ、あるいは唐突に奇跡が起こったりと、荒削りにもほどがあるつくりだけれど、それをイキオイで乗り切ってしまうだけの熱量はたいしたもの。いつまでも使える手ではないけれど、細かい嘘に拘らずにすっとばすという思い切りの良さも短編ゆえの味わい。 時が経ってからではなく、いまここで起きたことをわらいばなしにしてしようというタイトル、ちょっとキャッチーで印象に残ります。
女二人の意見のささいな違いをワンカットでごく短く描く「キレイは作れる」はどこかのカフェであったかもしれない会話の一本。物語そのものはすれ違った口論のヒートアップ、それをクールダウンするかのような煙草の存在。ツクリモノっぽい極端なキャラクタもさることながら、喫煙で足を踏みならし派手にスパスパするリズム。全体に強くデフォルメを効かせてごく短くつくりあげています。
一本目の続編だと謳う「まみれまみれ」、夢を半分あきらめて日々の生活に埋没した男。懸命に夢に向かう若い女の姿に過去の自分たちが重なり見えるよう。応援する気持ちは好意になり、しかしそれは受け入れられないほろ苦さ。ケンタッキーフライドチキンを思わせる調理アルバイトのシーンは、日常のルーチン化された生活を思わせます。同じことのもう一度の繰り返しには想いが重なり、強烈な熱量を帯びるのです。
ちょっと甘酸っぱく不器用な人の物語を描く彼ら、確かにパワフルな反面、荒削りでもあるのだけれど、わずか一時間の間に彼らのことがいとおしくなるような不思議な魅力があります。作演を兼ねる荒木宏志は不器用でパワフルを牽引し、中村幸はヒロインという説得力と時にコミカル、時にパワフルを併せ持ちかわいらしい。 九州での公演はもっと人数も居るようですが、東京公演の出演者は2人。 トークショーによれば、とにかくステージ数が多くて、毎週のようにどこかで上演を重ね続けているという地の力を感じさせるのです。
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