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2017.06.03

【イベント】「風乃キヲク」(月いちリーディング / 17年5月)劇作家協会

2017.5.27 18:00 [CoRich]

劇作家協会が戯曲ブラッシュアップを目的にリーディングとディスカッションで構成する定期企画。戯曲冒頭部(pdf)や記録動画(YouTube)があります。

廃工場らしい場所。派遣でリストラされた人々。社長の息子を誘拐してきた。声明文を送り、受け入れられない時はテロを行おうとしている。大人数の前ではうまくしゃべれない男や会話に関係ないことをはなす女もまた、派遣切りされて人々に混じっている。

正直にいうとあたしには少々とっつくのに苦労しました。派遣切りというきっかけはともかく、誘拐やテロといったかなり大がかりなことを仕掛けようと考えるわりに全体に行動が行き当たりばったりで稚拙で、観客であるあたしが誰に寄り添って物語に乗っていけばいいかと惑う、という感じ。もう一つはたぶんあたしの集中力散漫だけれど、この物語でメインに語られている物語が、冒頭と終幕で未来の視点に居る二人が現場の廃工場を訪れて描かれている回想の体裁で描かれていることを聞き落としてしまったことにあるかもしれません。

この手のとっつきにくい芝居でもありがたいのがブラッシュアップ、つまり上演後に設定されている観客を交えた議論の場です。いくつもの意見がでましたが、アタシが腑に落ちたのは、この物語を「若い男が、さまざまな大人の姿をみて成長の糧を得たあの現場を回想している」つまり、成長の物語だということでした。なるほど、木訥だけれど誠実で理想に燃えるリーダーや、リーダーが好きでたまらない女、控えめで調整力があって補佐をするスマートな男だったり、若くて跳ね返りな女などさまざまな人間模様をある種観察し、過去の時点ではうまくしゃべれなかったけれどきっと成長して二人でこの場所を訪れることができるようになったこと。じっさいのところ明確な成長のポイントは描かったりするのも歯がゆいけれど、彼にとっては間違いなく強い印象を残した場面、ということだから、ということはなんとなく理解できます。

初演時点で借景を用いた上演を行うことで精一杯で戯曲の強さに不安を覚えたことが作家がこのワークショップに参加した目的だとはなします。参加者はサポートしながらもいくつもの指摘。とりわけ、派遣切りとはいいながら、終幕打ち上げと称して呑みにには行くぐらいには心と経済の余裕があることと(サークル活動なのでは、という指摘も面白い)、誘拐やテロという物事の大きさとのギャップという点は、私にとっても違和感の大きなものでした。この芝居全体が何の話なのかが私にはとらえきれなかったことの大きな理由の一つです。それが成長の物語なのだ(戯曲の外で)補助線を引くととすると、その幹はみえてくるようにも思います。

会話の脈略とはほぼ関係なく、しかし部分的に、あるいは文脈的に奇妙な合致を見せる女の唐突なせりふも、私には厳しい。これも席上指摘のあったように、派遣で働いているならおそらく指示を受け作業はできるけれど発話という形で表現できないということかもしれません。派遣の人々が彼女のいってる真意はなんとなく理解できるというのもそれを裏付けます。が、そういうある種物語に特殊な役をここにおくための理由がワタシには欲しい。 この役を演じた役者・橘あんり が、文脈に関係ないことを延々せりふとして発話するためには、演ずる側にも少なくとも内面の理屈や動機が必要で、それを見つけることに苦労した、という話は印象的でした。

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