【芝居】「TTTTT」キュイ
2017.5.5 14:00 [CoRich]
綾門優季の戯曲を別々の三人の手による演出で。14日まで春風舎。115分。
デモに参加することなんか思いもよらなかった。デモはじゃまだと思っていたりする。半世紀前の記憶がよみがえる。仕事のせいでデモにいけなかった、友人がデモにこられずそれから疎遠になった。爆発で死んだ5人。あの日のスピーチが今でも心に残る。あの事件で身体が不自由になりリフォームしてるかつての友人。
「人柱が炎上」
2020年オリンピックの東京、しかし東京の各区の人口は減り続けていて、大きな地震がその傾向を加速する。それぞれの土地神があつまるが打開策は見いだせない。
「景観の邪魔」
男が植物状態になって20年が経ち、医療の進歩で目覚めると、都市部はすべて女性が支配していた
。「非公式な恋人」
現代口語演劇をベースにする青年団系の劇団ですが、ワタシはそれほど熱心に追いかけそこなってるユニット。一人の作家が描く三つの物語は、政治に対して何かをいう人々であったり、縮小していく東京という都市であったり、あるいは大多数を女性たちが占めるようになった世界であったり。作家自身の何かの問題意識に端を発したのか、あるいは世間で起きている何かを描こうと考えたのか。当事者たちよりはそこから少し距離をとった視点から描いているという気がします。スタイリッシュだしもちろんどれも安心して見られるクオリティだけれど、そこから先のもう一歩の踏み込みだったり血のにじむような内側を感じ取れないアタシなのですが。
「人柱〜」はデモをめぐるいろんな視点の人々。参加しようと思った人、仕事で参加できない人、傷ついた人。四年後にその参加者の家をバリアフリーに改装するという後日談的な視点も持ちつつ。複数のカメラで捕らえ、効果的に編集したような雰囲気で、まるで一種のドキュメンタリーを見ているよう。特定の現実の何かに根ざした描き方ではないのだけれど、一人芝居なのに視点がぐるぐるとテンポよく変わっていく描き方は新鮮なのです。
「景観〜」は衰退する東京という視点の物語。日本の中でも東京だけが衰退しそれ以外の都市に人口が流れているという視点は珍しい気がします。正直に言えば日本が衰退しつつあるという現実はあっても、東京がその先頭にたって衰退していくということに対する説得力が地震以上にもう少し何か欲しい気がしますが、もしかしたらアタシが何かを見落としている可能性もあるやもしれません。土地神が集まるが解決策が見いだせない会議は踊る雰囲気はちょっと楽しい。
「〜恋人」は笑いも多く見やすい一本。演出のみならず物語にもどこかにワワフラミンゴ風味を感じるアタシです。かわいらしい女性たちの会話よりはもう少しあけすけでやや暴力的でもあるのは、女性たちが圧倒的な力を持つようになり男を要らないものとみなすようになった世界ゆえの無自覚な暴力を逆の視点で見せられるよう。
あけすけ、という点では性交に関して凹凸をはめあわせるのではなく、がギザギザをかみ合わせるようにして男女対等であるという序盤の小さな話が思いの外ぐっとくるアタシです。そこからもう一歩進んで、男女であっても人によって形が違うという視点もよく考えたら相当にあけすけだけれど、考えさせられるフックになるのです。東京は女性専用都市になり、それなら性犯罪もなく平穏に暮らせる日々なになるだろうという視点はまあ一種のユートピアな描き方ですけれど、いっぽうで(女性が)性欲はなくなったはずなのにあの日の性欲がフラッシュバックするというのも、アタシには知る由もないけれど、一つの現実を描くのかもしれません。
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