【芝居】「遠き山に陽は墜ちて」肋骨蜜柑同好会
2017.5.1 19:30 [CoRich]
125分。2日まで風姿花伝。
姉は身体を壊し弟のアルバイトで暮らす姉弟。米軍機が墜落して数日後、町でホームレスのようにうずくまっていた人が職務質問を受けているところに出会い、いきがかり上で拾って帰ってくる。最初は水しか受け付けなかったがリンゴを口にして話し始めるようになる。前に暮らしていた場所は小さくて、そこにはバラがあったのだという。バラの刺に嫌気がさしてそこを出たが、戻らなければならない。
金髪の人間が空から落ちてきて、前にいたバラの花の場所の話を交えたりしつつ、地球の人々との交流。映画「地球に落ちてきた男」(未見, wikipedia)や、星の王子様(wikipedia)を思わせる物語、ということは観ている最中には気がつかず、終演後の話を耳にしてやっとわかるアタシです。なるほど、あの金髪はデビッドボウイ、スーツは星の王子様か。作家による小ネタ解題もちょっと楽しい。
バラの花との小さな世界で暮らしていたがそこを出てやってきたここ、ホームレスとして見いだされ、つつましく暮らしていた姉弟との暮らし、コミュ障気味の花屋や酒浸りの隣人などの人々とのつながり。その招待を暴こうとするライターや編集者。世界の片隅のごく狭い人々との間に起きた波紋、そしてその男が姿を消すこと。あるいは一つのバラとかたまりのバラに対比されるように、人も、ひとりひとりの人間は名前ある個人だけれど、かたまりとしての群衆のことを語ったり。バラに喩えられるようなワガママな女の存在。どこか童話めいた雰囲気の物語の骨格。
一方で、絵に魅せられた弟がそのショックを受けた絵が忘れられず探求するきもちの真っ直ぐさだったり、ややコミュニケーションに難ありがちな花屋の店員の姿だったり、あるいは宇宙人をめぐるロズウェル事件に共感するライターと編集者、酒に溺れる女など、それほど特異なわけではないけれど、何かに囚われたり少しだけ歪みのある人々を人間臭く描くのです。
年齢も性別も不詳だけれど、確実な存在感をもって演じた田中渚が圧倒的な存在感。ライターと出版社員の二人組のバディ感を紡ぎ出した高山五月、窪寺奈々瀬のかみ合い方の妙。物語の視点であり語り部であり続けた姉を演じた嶋谷佳恵のフラットで居続ける力。
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