【芝居】「りんぷん手帖」やみ・あがりシアター
2017.5.14 14:00 [CoRich]
16日まで王子小劇場。90分。戯曲pdfのダウンロードコードを会場では無料で配る心意気。
結婚し専業主婦となった女、ずっと家にいる妻のことを夫は心配し、主婦友をみつけたらと勧める。妻はネットの掲示板で出会った三人の専業主婦たちと時々会うようになる。その会を主催する女は出会うなり、夫に買ってもらった手帖にあらかじめ書き込んであった予定を続けていこうと切り出す。友達ができたらしたいことがずっと書き連ねてあるのだ。
四人の主婦友たち(+うち一人の夫)の物語が順方向に進む一年と、20歳過ぎの親友らしい女性二人から逆方向に時を進めて子どもの頃の初めての出会いに至る十数年の物語の断片を交互に組み合わせ、終幕に放り投げられた「手帖」が主婦たちから少女たちに渡って時間軸がかみ合います。少女たちの側に再就職を果たし子持ちとなった夫が現れたりはしますが、基本的な物語としては別個のもので、かならずしも組み合わせによって生まれた妙という感じになっていないのは惜しいところ。
二つの物語が描くのは、子供のころは何も考えずに自然にできていたはずなのに、おとなになって改めて難しい、友達を作るということかなと思います。主婦四人はそれぞれのバックグラウンドがかなり異なっていて、仕事ができて家事もあっという間に終わってしまって時間をもてあますであったり、サッカー選手の妻であったり、一方では経済的には困窮していてクスリの売人もどきのヤンキーだったり、あるいは夫に愛され続けているがそれがなぜかDVに繋がるゆがんだ妻であったり。巻き込まれるように過ごす一年だけれど、埋められない溝も、近寄る距離もそれぞれにあって。近寄る距離感があればもしかしたら緩やかには続けられるかなという終盤。 一方の少女たち、幼い頃にヤな感じで出会ったとしても、自分のやりたいことををそれぞれにやっていて、進む道が離れ、暫くぶりでも会えばすぐに距離が縮まる絶妙の距離感の心地よさ。これからもきっと続くと思わせる雰囲気。
昆虫好きな若い女を演じたさんなぎの自在なテンションと美しさのギャップ。その親友を演じた高橋ゆなの序盤で見せるはっとするような色気が、子供に戻っていっても隠せないのもまた魅力。家でぼおっとしていた妻を演じたこうこの揺れないフラットさが物語の柱のよう。手帖の主を演じた小川碧水は台詞でも現れる「儚すぎる」たたずまいとDVにまつわるギャップの面白さ。
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