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2017.03.29

【芝居】「すかすからす」ムシラセ(しきおりおり、あおきえり)

2017.3.25 19:00 [CoRich]

ムシラセの保坂萌が、トリッキーな女優・青木絵璃をフィーチャーする企画公演の二回目。 26日までRAFT。70分。

面白いことが大好きな女子高生。親友とふたり放送部に入っているが一年生が入ってこなければ廃部になってしまうことの危機感からラジオドラマを作ろうと思い立つ。脚本を依頼された担任教師は気が進まないが、同僚との不倫をその親友に握られ嫌々ながら協力することにする。

女子校の教師たちが卒業式リハを見ている、というシーンから一年後の卒業式という時間の流れ。やたらに色っぽい養護教諭、卒業式なんかじゃ泣かない国語の女性教師、その上司でじつは不倫関係にある男性教師。やたら元気で面白いことに猪突猛進な女子高生と、彼女の事が好きでたまらない親友と彼氏と。ノイジーで大騒ぎで、しでもイノセントな女の子が引っかき回すコメディで押し通すかと思うとそうではないのです。 不倫関係の教師二人、女性教師にとってそれを握られていること、「パン祭り」と揶揄され、支配されるストレスがゆっくりとダメージを与えていきます。育ちがいい筈の親友がその支配を続けるのは、なにより親友のことが大好きだからだけれどそれが女性教師の臨界点を超えたときに一瞬の爆発がノイジーでイノセントな女子高生に向くけれど、直後に倒れるという転換。

ここで物語はくるりと転換します。姉が語る妹の背景やイノセントさで人物に厚みをあたえつつ、表面的な明るさ騒がしさとは裏腹の病弱さと闇の深さを手早く語ります。この二つのコントラストをもった人物だったのに、それが卒業式に出られないということ。追い打ちをかけるように、あらかじめ録音してあった素材が流れることで再びその「表面的な明るさ」が目の前に立ち上り、泣かないはずの女性教師の涙になだれ込むのです。

青木絵璃、ちゃんとしててイノセントなのにちょっと騒がしくというのがなるほど、トリッキー女優の名に相応しく。女性教師を演じた井口千穂は七の椅子からの圧倒的なコメディエンヌが印象的な役者ですが、美人なのにちょっと困らせられる人物をやらせるとやたらと巧いのも彼女の特性。親友を演じた渡辺実希は大きな眼が印象的な役者ですが、なんかテンションが妙なところがあってまた別種のトリッキーさで目が離せません。 不倫教師を演じた山森信太郎は後ろめたい隠し事をする大人、という造形が巧いし、なんか不倫でモテるというのも実は納得させられる説得力。彼氏を演じた一宮周平はどこまでもチャラさが良いのです。 作演を兼ねる保坂萌は、ちょっとサイコパスめいた雰囲気を漂わせつつヤンキー口調というちょっとキャラクタ優先な人物を作り出し、中盤の物語の大きな転換を担います。さすが。

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