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2017.03.20

【芝居】「未亡人の一年」シンクロ少女

2017.3.10 19:30  [CoRich]

130分、12日までスズナリ。再演とのことですが、アタシは初見です。

夫を亡くして三年が経つ女はまだ忘れることができず悲しみに暮れる日々を送り、母親と二人で暮らしている。その二階に母親が住まわせている男は小説家になりたいと願って長いがモノになっていない。母親は娘に笑顔を取り戻す一助になればと男性の家事手伝いを依頼する。
もうひとり夫を亡くして十年が経つ女も夫を忘れることができず酒浸りで、中学生の娘のことは面倒で毎日のように隣の家に食事を食べさせに行かせて、その家の大学生の息子は密かに好意を持っている。酒浸りの女の女友達は男運が悪いが、小説家志望の男と恋人になり、その恋人を紹介しようと連れてくるが、小説家志望の男は働く気もなくモノになるまでは養って欲しいという。

椅子とテーブルのダイニング、ソファとのリビング、和室という三つの場所プラス街角風の場所を設定。夫を亡くして時間が経つのに立ち直れない二人の相似形の物語。一人は小説家になり母親に心配され最初は望まないけれど恋人を作るに至り、一人は女友達の恋人の小説家志望のダメ男が入り浸るようになり。相似形に見えている二つの物語は、やがて時間軸上に一つに連なる物語が現れます。

夫を亡くしずっと立ち止まっていたそれぞれの女が恋人や「兄」と出会うことで新たな一歩を踏み出すという成長をシンプルに描いた物語は、二人の時間の流れのみならず、親子である二人が相似した人生を歩んでいることを描くという構造によってぐっと奥行きを増すのです。

先の時代の未亡人の前に現れた小説家志望は恋人にはなり得ないけれど、亡夫のことだけで精一杯で、女友達ですら慰められなかったけれど、止まっていた人生をわずかでも進められるかもしれないという気持ちを持たせてくれた男。その男と一緒に暮らすためにとっさについた「兄」という嘘、それは中学生の娘にすらあからさまに嘘だとわかるけれど、それを見守ろうという娘。

並行して語られる後の時代の未亡人を見守る母親はもしかしたらかつての自分の人生に重ねているかもしれません。だからこそ恋人とは限らなくても同じ屋根の下で暮らす他人が必要なのだということが思いつくのかなぁと思ったり。 時におしゃれな音楽で映画が好きと公言する作家のいろいろな引き出しの断片が垣間見えるのも楽しい。とりわけタップを踏むおしゃれなミュージカルナンバー風のかっこよさ。

正直にいえば、終幕近くが少々長い印象。二つの場面の関係は割と早い段階でわかる上に、台詞としてそれが語られるのも割と早い時間だったりして、そのあとにいくつかの小さな会話が続くのが長さを感じさせる理由なのかもしれません。

先生と呼ばれる未亡人を演じた石黒麻衣、ワタシが座った席が序盤表情が見づらかったせいもあって、喋り方が作家・名嘉友美に似ているなぁという印象。丁寧できちんと。その母親を演じた泉政宏は年齢を重ねたおばさん感が程よくいいのです。呑んだくれる未亡人を演じた川崎桜、前半のあまりに進まない感じから先に進むものを見つけてからの瞬発力。その娘を演じた三澤さきは、子供と大人の境界という難しい役、笑顔と怯えのダイナミックレンジが印象的。家政夫を演じた諫山幸治はやけに不躾な造形で、身近に居たら嫌だなとは思う感じだけれど、彼女にとっては必要な存在だというのが作家の優しい視線。

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