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2017.02.26

【芝居】「ラクリーメ・ロッセの読書会」もじゃもじゃ頭とへらへら眼鏡

2017.2.18 15:00 [CoRich]

何カ所かでの上演をしながらブラッシュアップを重ねる企画公演。 85分。歌舞伎町jimushono1kai。19日は小田原公演。

田舎の町のトマトケチャップ工場。村長と社長の熱意で一度は好調だったが、商品の多様化に失敗し負債を抱えて倒産し負債は村に残された。村長は姿を消し、社長は崖から飛び降りた。社長の女は弁当屋からの転身で常連客の男たちに声をかけて男たちは魅入られるように働いていた。
いよいよ出発という日、社員たちは追われるようにこの土地を出ようとしているが、社員の一人は社長が飛び降りるときに残した文庫本を熱心に読んでいる。男を追ってこの村で住んでいた女が一緒になろうと考えているが、男は社長が忘れられずにこの村に残るという。

一等地にあるのにコンクリ打ち放し、バーカウンター付きというちょっとおもしろい場所。バックヤード風に仕立てて、廃工場という雰囲気に。 前半は愉快な男たちという人物造形、工場が閉鎖され追われるように出て行く人々という背景を説明しつつ、やがて姿を消してしばらく経つという女性社長のことがみんな好きで集まったというちょっときな臭い登場人物の共通点が語られます。唯一の女性の登場人物のこともみんなちょっと下心がありつつ、それはあくまで二番手、いっぽう女性はこの男たちのなかの一人のことが好きでここまで単身追いかけてきていて、その追いかけている男は、男たちの中でもとりわけ女性社長のことが好きで、置いていった文庫本にヒントがないかとずっと探し求めて没頭しているという構図。

謎めいた社長の失踪、一度は好調だった工場が閉鎖に追い込まれるなどきな臭い話題には事欠かないのに、その問題自体はほとんど解決されません。それは劇中の文庫本が女性作家の手によるもので、問題は解決されず関係を描くことに作家の興味がある、というものとおそらくは自覚的に相似形を描きます。唯一の女性がカップリングの相手を変える、ということは、(双子の兄弟が決別すると同様)、実は大きな決断なのだけれど、芝居の上ではわりとあっさりで、結果としては何も解決せずに終わる、という印象を残します。

女性作家が、という意味では男性の一人がレディスディは男性差別だといってみたり、女が誘うから男が勘違いするなど、男が書けばあっという間にアウトなことをいくつか。この二つ、作家自身の客観視なのか、あるい何かの開き直りかと思うほどに、こちらもおそらくは自覚的に描くのです。

作家自身の 問題意識の表出もまた、そういう事実がある、ということ以上には進みません。男がこの町で閉塞して生きていくのと同様、作家自身が何かをあきらめたのかといういらぬ心配をするアタシですが。

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