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2017.02.01

【芝居】「ユー・アー・ミー?」ラッパ屋

2017.1.22 17:00 [CoRich]

すっかり年齢を重ねた人々と会社の話、という路線が定着した感のあるラッパ屋の新作。東京千秋楽。 110分。22日まで紀伊國屋ホール。そのあと宮城。

アイディア商品の開発で大きくなった会社。営業部長はもはやお飾りでメールも読まず、スタバもPCもいまいちで部員たちはお荷物扱いしている。
かつては忙しくてものんびりした感じはあって、学生の延長線のように夜遅くまで半ば遊びながら仕事をしていた会社だったが、社長が代わり、社風が効率を重視するように変わって随分経っている。あの時一緒に楽しく仕事をしていた同期や後輩は次々と会社の変化に合わせて「キャラ変」してできる会社員になり、スタバのコーヒー片手にPC片手にカタカナの単語で会話している。
ある夜、自分もキャラ変したできるサラリーマンになって目の前に現れる。一度はその応援で変身できるかと思ったが、気がついたらそのキャラ変が自分にとって変わって働いている。他の人々のキャラ変前の、かつての懐かしくダサい彼らも目の前に現れて。

キャラ変更というかなり無茶なSF的な設定はあからさまにファンタジーだけれど、そうなれたかもしれない自分、あるいはそうなれなかった自分を対比してみせる巧いアイディア。登場人物の殆どがキャラ変する設定で、それぞれの人物の対比を見せる中盤あたりは誰もがそうなんだ、ということを表そうという意図はわかるものの、正直にいえば、少々中弛みする感じがあります。イケてる彼なり彼女なりのイケてなかった頃がこの役者、という少々残酷な配役になるのが、楽しかったりはするのだけれど。

ラッパ屋は観客も役者も中心となるのはもう五十代、会社の中でイケてる人もイケてない人も、もう今さらそうそうキャラ変できるでもなく、このままの感じで会社員生活を終えるのかなぁが見える世代。そうはいってもバブルも経験し会社員人生楽しかったをほぼ全体が感じていた逃げ切り世代ですから、これ自体が既にファンタジーではあるのだけれど、ワタシもその残り香ぐらいは感じる世代なので、その楽しさを思い出すようで楽しい。

イケてる奴らを追い出して楽しかったあの頃の雰囲気で笑いながら仕事というお花畑を一度は見せるけれど、もちろんそれじゃ会社は続かないわけで、イケてる奴らがもう一度戻ってくるのです。もう後戻りできないように会社も世間も自分たちも変わってしまったのだほろ苦く、しかし現実へのソフトランディングという感じで優しい視線なのです。

イケてない営業部長を演じたおかやまはじめは語り部も兼ね、しっかりとメインを背負います。イケてる方に行かないという頑固さもちょっとコミカルに造形されていて楽しい。その対となるイケてる営業部長を演じた松村武は威圧感すらあるデフォルメされた造形でこれも対比となって楽しい。同じように弘中麻紀と岩橋道子、大草理乙子と谷川清美、宇納佑と木村靖司の対比も絶妙に雰囲気があっているところもある、と思っちゃうのは衣装や演出かなぁと思ったりもします。

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