【芝居】「足跡姫」NODA MAP
2017.1.21 14:00 [CoRich]
3月12日まで東京芸術劇場・プレイハウス。休憩を挟んで155分。
出雲阿国の後継を看板に、幕府に禁じられた女歌舞伎を演じる一座。看板の弟は地球の反対側に行くことを夢見て穴を掘っているが、偶然将軍襲撃の罪で牢屋に入っていた浪人たちを逃がすことになる。その犯人として捕まることをおそれた座長は弟に出て行くように命じる。
死体を買い取り腑分けをしようとしていた学者、買われた死体が生き返り一座に居着くために一座に入る。浪人たちも身を隠すために一座に加わる。
姉弟が腑分けの学者を真剣で誤って斬り殺してしまい川に捨て、姉弟は身を隠す。その間に二番手が元祖を名乗り一座は人気がでている。姉は戻るに戻れないが母の残した絵巻物が後継者の証拠で足跡姫が憑依する。
中村勘三郎へのオマージュを明確打ち出した一本。作家は歌舞伎の始祖とされる出雲阿国と女歌舞伎の時代を舞台に描きます。現実のあれこれ翻弄されるけれど、現実からは最も遠いどこか、ぐわっとなるものを探す作家と役者。ナマの芝居は、肉体も言葉も空間に消え、役者もいつかはもしかしたら病魔によって消えてしまうけれど、演じられた芝居の「芸」は確実に人々の記憶に残ることを通して、中村勘三郎への強い追憶を強く印象づけるのです。
ここ数作は、現実世界への強い懸念と怒りを根底において描く事の多い作家だったけれど、今作はそれよりはだいぶ優しい視線。 それでも、女歌舞伎が禁じられその方便として「足跡しか見えない」といったりするというような、河原乞食と権力の微妙な持ちつ持たれつ感という、芸能がそもそも内包している問題まで踏み込んでいることを描いてみたり、反乱分子だった男が権力者を暗殺し密かに権力者と入れ替わって見せたりと世話物として、切り込むところはきっちりと切り込むのです。
女歌舞伎の踊り子たちの衣装はベージュのボディスーツに入れ墨を思わせる模様で、まるで全裸のように見えたりして、ワタシのオヤジ心をくすぐります。弟が掘り進んだ穴を思わせる舞台の奈落への穴やプレイハウスに仮設された花道も歌舞伎の雰囲気めいっぱいで楽しい。
ネタバレかも
終幕、女が母親と同じ病に冒され声も肉体の動きも失いつつある場面はまさに勘三郎の臨終を思わせるストレートなシーン。舞台奥一面の桜の花は美しく、故人への作家の最大限のオマージュを印象づけるのです。
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